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雨宮編集長のコゴト@攻めの山口、受けの伊藤

2014.09.20 | 週刊将棋編集部

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 マイナビ女子オープンの本戦が開幕した。里見香奈前女王の欠場は残念だが、そのぶん新たなヒロインの誕生に期待したい。
 
 開幕戦の昼休明けを見に行った。将棋会館での本戦は担当記者が仕切っているので、編集長がやることは特にない。スポンサーになっていただいたお二人に挨拶して、再開5分前、いっしょに対局室へ入った。手番の山口恵梨子女流はすでに盤面をみつめていた。
 
 昼休までの進行はネット中継で見ていた。伊藤沙恵奨励会1級の少々突っ張った作戦に、山口女流が反発した。面白い序盤だった。山口女流は銀を単騎で繰り出して1歩得したが、その間に伊藤1級が伸び伸びと位を張り、作戦勝ちになった。先手は飛車落ちみたいになってしまった。
 山口女流が挑発に乗ってしまった、という見方もある。しかし目先を無難に収めようとしてジリ貧になるよりは、突っ張り返してつんのめるほうがよほどいい。山口女流の前向きな闘争心だったと思う。こういうの、好きです。
 昼休再開時(上図)には、山口女流の苦戦が明らかになりつつあった。伊藤1級が席に戻り、再開が告げられてもすぐには指さなかった。やっぱり苦しいんだろうな、と思った。
 しばらくして指されたのは▲2三銀不成。成るか不成かは難しいが、たぶんこの一手なのだ。△同歩なら▲1一角成で勝負。銀のただ捨てながら「こういう筋を知っていれば発見自体は難しくない」という種類の手で、「単騎の銀の顔をどうやって立てるか」という方向から考えてもたどり着ける手段だ。
 とはいえ、指すには勇気がいる手でもある。取られて全然ダメならひどい。山口女流も頑張って読んだだろう。いい場面を見ることができた。伊藤1級が銀を取らずに飛車をかわしたのは、われわれが退室してから間もなくのことだった。
 
 山口女流がいったんは食いつく気配を見せたものの、伊藤1級の守備は堅固だった。最後は大差になったが、どちらも持ち味を出してくれたと思う。「攻めの山口、受けの伊藤」。覚えておこう。