教育・医療・Biz iOS導入事例

「売上」ではなく、「購買体験」を向上するための店舗分析

文●牧野武文

Apple的目線で読み解く。ビジネスの現場におけるアップル製品の導入事例をレポート。

世界的に有名なアウトドアブランドとして知られるスノーピークは、リテールネクストの店舗分析システムを導入した。カメラにより店内の顧客の行動分析をすることで、ECサイトと同じように店舗内の顧客の行動を数値化できる。スノーピークは、このシステムを使ってさらに豊かな購買体験を提供することを目指している。

 

 

来店客の行動を数値化

株式会社スノーピークは、キャンプ用品を中心にアパレルやモバイルハウス事業等を展開する総合アウトドアメーカーだ。本社は新潟県三条市にある5万坪のキャンプサイトの中にあり、燕三条地域の金属加工技術を背景に質の高い製品を作り出し、根強いファンを獲得している。原点は、創業以来一貫して 「自らもユーザーである」。1958年の創業から革新的な製品を提供し、 ユーザの笑顔を作り出してきた。販売は直営店国内19店舗、インストア店舗(モール内など)49店舗などを中心に、米国、韓国、台湾などにも店舗展開する。そのビジネスはアウトドア製品に留まらず、キャンプ場の運営やアパレル、都市や住宅、オフィスなどにも広がっている。

「スノーピーク様で導入された弊社リテールネクストのソリューションを一言で言えば、リアル店舗内のデータをショッピングサイトのロジックで語れるようになる仕組みです」(リテールネクスト・ジャパン ダイレクター・関根正浩氏)。このシステムの中心は天井などに取り付けられるカメラで、来店客が店内をどのように回遊したか、どの商品棚の前で足を止めたか、ウインドウディスプレイの変更や販促キャンペーンを行った際にどれがより効果的に集客や売上につながったのかも解析できる。

さらに、来店客の店内滞在時間や購入率と店員シフトデータを連動させることで、曜日別の最適なスタッフ数を把握することも可能だ。映像を除くデータはすべてクラウドに上げられ、リアルタイムで閲覧することができるほか、リテールネクストの専任アナリストによって解析され、毎週、毎月などのタイミングでレポートが送られる。

ネット上のECサイトではこのような顧客の行動をきめ細かく収集し、サイトの改善の参考にしていくことが当たり前だ。顧客がどの商品を見て、どの商品を購入したかという〝導線”や〝滞在時間”、購入操作時の〝誤操作率”などの指標を見て、より魅力的で購入しやすいサイト構造に改善していく。一方で、リアル店舗ではこのような〝科学的な解析”は存在しなかった。現場スタッフが体験の中から導き出した「人は右回りで店内を回遊する傾向がある」「入り口付近にセール商品を置くと集客率が上がる」といった法則は、その業種、その店舗では有効かもしれないが、一般化して他店舗、他業種に適用するには難がある。リテールネクストのソリューションは、このような法則を見える化する。

 

 

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スノーピーク代表取締役社長・山井太氏(右)と、リテールネクスト・ジャパン・ダイレクター・関根正浩氏(左)。

 

 

「買わなかった来店客」の分析

たとえば、来店客の商品購入率が20%だとすると、80%の人は何も買わずに帰ったことになる。従来のPOSレジデータの分析では、この購入した20%の来店客の行動しか分析できない。しかし、リテールネクストのソリューションでは、すべての来店客を分析することができ、POSレジデータと連動させることでより深い分析を可能にする。

たとえば、こんな実例がある。ある雑貨店では入り口近くにセール品を目立つように置き、客を呼び込もうとするプランを実施していた。確かにセール品に惹かれてたくさんの客が入ってきた。しかし、分析をしてみると、セール品に惹かれて入ってきた客はセール品付近に滞留し、店内の奥には入らずに去っていく。そこで、入り口付近にはむしろ高価で、他店には置いていない魅力的な商品を陳列し、セール品は店舗の奥に移動させた。するとその魅力的な商品に惹かれて客は入ってくるが、価格が高いので躊躇をする。しかし、奥にセール品があることに気がつくと店舗内を巡回するようになり、結果として平均店舗滞在時間が伸び、売上の向上に結びついた。リテールネクストのソリューションでは、このようなトライアルをほぼリアルタイムでデータを見ながら実施していけるのだ。

 

 

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新潟県三条市にある本社社屋。5万坪のキャンピングサイトの中にあり、直営ショップも併設される。社員は全員キャンプ好きで、顧客とスノーピークの社員が一緒にキャンプを楽しむ「スノーピークウェイ」というリアルイベントを定期的に開催。フェイス・ツー・フェイスで話し合うことで、顧客との距離を縮め、ブランド作りに活かしている。また、フェイスブックコミュニティの「SnowPeakコミュニティ」を運営することで、日常的に顧客とコミュニケーションを深めている。すべてのギアをスノーピーク製品で揃えるという熱狂的なファンが多く、そのコミュニティブランド作りはアップルを含め、世界的に注目されている。【URL】https://www.snowpeak.co.jp

 

 

顧客満足度を上げるための分析

スノーピークでは、まず直営のアパレル店舗からこのシステムを導入し、検証後に他の直営店などにも広げていく予定だ。主に、季節やキャンペーンなどで店内レイアウトや商品棚構成を変えたときに、その効果を科学的に検証するために使うという。

一般的に、このような店舗分析システムを導入する目的は売上の増加であり、スノーピークももちろんそこには期待しているという。しかし、導入の主眼は顧客満足度の向上であるという。

「私どものお客様は大きく2つに分かれます。1つはスノーピークというブランドの熱狂的なファンのお客様、もう1つはブランドについてはあまり知らなくても製品に興味をもってくださったお客様です」(スノーピーク 代表取締役社長・山井太氏)。

店舗スタッフは、接客中の顧客がどちらに属するのかを瞬時に見分け、対応を変える必要があるという。前者の場合は、製品そのものの説明よりは、同じアウトドア愛好家としての情報提供が重要になる。購入に結びつくだけではなく、幸せを創ることにも注力しているため、店舗スタッフとのコミュニケーションを楽しみに来られる方も多い。一方で後者に対しては製品の機能や品質を説明していくことを求められていると感じている。

いずれにしても、スノーピークはただ製品だけを売っているのではない。その向こう側にある楽しみ方という体験を込みにして販売を行っている。そのため、接客は一般的な量販店などに比べて、厚く、濃いものになる。これが、スノーピークならではの接客の大きな特長であり、他業種の店舗と比べても来店客の滞在時間はとても長い。

しかし、そこで問題になってくるのが、店舗間における質の差だ。現在、スノーピークでは世界で100人以上の販売スタッフを抱えているが、店長やスタッフの能力、パーソナリティーに依存した方法論で接客をしていると、それこそ100とおりの方法が生まれてしまう。

スノーピークの活動のミッションは自然指向のライフスタイルを提案することで、「お客様を幸せにする」こと。そのため、スタッフの熱意、そして開発力や生産設備もすべてお客様のためとし、自社製品にも自信を持っている。

「アウトドアの活動以外の時間にもスノーピーク製品を使っていただきたい。そのためにはお客様と直接触れる店舗も質も高くなければなりません。リテールネスクトのソリューションによって得られた分析結果を活かし、優れた店舗のノウハウは他店舗にも横展開していきたいと考えます」

こうした店舗間におけるスキルやノウハウの差は、どのような業界においても問題となることだ。飛び抜けて優秀な店長がいれば、経験不足の多いスタッフを抱えた店舗などもあるだろう。しかし、スノーピークではいち早くリテールネクストの店舗分析のソリューションを用いることで、すべてのお客様に100点の購買体験を提供しようとしているのだ。

「スノーピークという会社は、ロマンチックでセンチメンタルな会社なんです。弊社はミッションとして"The Snow Peak Way"の実現を掲げており、私たちもユーザもお互いが感動できるモノやサービスの提供を追求しています。そうした創業時からのスピリットをとても大切にしており、ユーザ目線のものづくり、そしてそれに感動してくれるファンの皆さまへのエンゲージメントは他の会社には決して真似できないものと自負しています。ITを使ったリアル店舗分析や、その他のIT技術も積極的に今後使っていきたいと考えますが、その導入の目的はやはり『お客様を笑顔にするために』なのです」

 

 

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Wi-Fiやブルートゥース機能も内蔵したリテールネクスト製カメラ。映像からデータを抽出するためのCPUや防犯用の録画機能も持つ。

 

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カメラによって得られた店舗内のトラフィックデータはクラウドへと送られ、分析・視覚化される。入店数、入店率、店内各エリアへの立ち寄り状況、店内滞在時間、来店頻度などさまざまな観点から店舗分析を行うことができ、店舗レイアウトや内装、スタッフ配置、商品陳列などの最適化に活かすことができる。【URL】http://retailnext.net/ja/home-jp/



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