KODAWARIの田村社長を訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

“すべてはモバイルになる”新世代のアップルとともに歩む

KODAWARIの田村社長を訪ねる

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

 

田村洋祐(たむら・ようすけ)

株式会社KODAWARI代表取締役。1985年生まれ。2006年に留学のために渡米、SoftBank表参道店での勤務を経て2010年2月にiPhoneアクセサリブランドを取り扱う株式会社KODAWARIを設立。2014年4月からは秋葉原の直営店「SHOWCASE」で取り扱い全商品の無償永久保証サービスを開始した。この日の鞄とシャツ、スーツはポールスミス、5本指シューズのビブラムとファッションもこだわりを感じさせる。

 

人生を変えてしまう出逢いがある。KODAWARIの代表取締役・田村洋祐氏の場合は、2008年7月のiPhone 3G日本発売が大きな転機となった。85年生まれで現在29歳の田村氏。20歳を迎えた2006年には留学のため単身渡米したが、2年後には留学資金稼ぎのために日本に一時帰国し、習得した語学を活かすために当時ソフトバンクの旗艦店であった表参道店で英語アテンドスタッフとして働き始めることになる。

「ある日、急にNDA(秘密保持契約)にサインを求められて30名ほどのスタッフが地下に呼び出されたんです。そこにいたのはアジアのアップルの研修担当者で『これが来週発売予定のiPhone 3Gだ』と説明を受けました。携帯電話ショップで働いてはいたものの、実はそのときまで“ケータイ”というものにほとんど興味がありませんでした。ところが、サファリや電話、メールやメッセージ、カメラといった機能を触っていくうちに、これはただごとではないという驚きとともに感激を覚えました。人生で初めて“携帯電話が欲しい”と思った瞬間でした」

 

 

 

iPhone発売から半年後、田村氏は外国人の客から「木製のiPhoneケースを探している」という相談を受ける。すでにiPhoneケースは国内でも何種類か登場していたが、人に勧められるクオリティのものはまだ少なかった。予想外の質問に戸惑いつつもインターネットで調べたところ、その木製ケースがオランダの「ミニオット」というブランドの製品だと突き止めた。

「単価が80ユーロで、当時のレートで約1万2000円前後だったと記憶しています。ところが、これがヤフオクでは3万5000円くらいで落札されていたのです。日本でニーズがあっても皆が買えるところはない。その日のうちにネットショップを立ち上げたところ、翌日には受注が入り始めました。そのときの価格は定価で仕入れて1万5000円で売ったので儲からなかったのですが、注文を繰り返していくうちに開発元から25%、50%オフで仕入れられるようになり、現在の輸入代理店ビジネスとしての基礎が固まっていきました」

 

 

 

取扱商品のブランド力や品質が上がっていく一方で、このままコモディティ化が進むことで低価格競争に巻き込まれるのを危惧した田村さんは、ほどなくWEBの通信販売からiPhoneアクセサリブランドを取り扱うディストリビューター(卸売業)へとシフトしていった。

「iPhoneアクセサリ業界の黎明期は市場が未熟だったせいもあって参入しやすかったかもしれませんが、今では国内向けに作って売るだけではボリュームメリットが少なすぎてビジネスになりません。グローバルに展開する企業じゃないと生き残れないくらいにアクセサリ市場は成熟してきています。ただし、海外のものをそのまま日本に引っ張ってきても売れませんので、ブランド戦略やマーケティングプランをパートナー企業に提案することもあります。例えば、このジャックペンを作ったのはイギリスにある社員数人のベンチャー企業なのですが、よい製品にも関わらずパッケージデザインも価格設定もダメでした。そこで長期プランを考え、すぐは利益が出ないけれどもギフトショーでのキャンペーンなどを行いました。いわば投資家の視点から先行投資してサポートし、ともにブランドを育てていくことで信頼を獲得するという考えです」

もちろん、そこまで力を入れるからにはその商品自体の商品力や競合との差別化ができるかといったポイントを冷静に見極める必要があるという。

「ジャックペンならば意匠登録できるという強みがあると判断しました。もっとも、最終的には自分が見て“欲しくなった”という要素は大きいです。やはり、驚きや感動を与える商品でなければ長続きはしません」

iPhoneアクセサリ市場の動向は不安定であるからこそ、ユーザに不安感を与えたくないと考えた田村さんが次に打ち出した策は2012年4月にオープンした直営店「SHOWCASE秋葉原店」(2年後の4月にリニューアルオープン)だ。ここでは高級iPhoneケースなどのアクセサリを実際に試せるだけでなく、購入した商品がたとえ自己責任で破損したとしても無償で永久保証するという驚きのサービスを展開している。

「私たちはメーカーではありませんので、むしろメーカーが持っている“こだわり”の部分を伝えることをミッションとしています。そして我々自身が一番こだわっているのは“安心感”というキーワードです。いまやMacやウィンドウズがなくてもiPhoneだけでバックアップもクラウド同期もできます。私自身も仕事の8割がiPhoneだけで完結しているように、人々になくてはならないものになってきています。そこで必要なのは、24時間いつでも生活の一部として安心して使える信頼感であり、iPhoneアクセサリもそのようにあるべきと考えています」

 

【取材後記】
田村氏は経営戦略の立案や社員への指示、海外取引先との打ち合わせなどをすべてiPhoneで行う。コンピュータは業務システムのメンテナンスと銀行取引で使う程度。特にアジア圏との交渉や打ち合わせなどはリアルタイム性の高い「LINE」がなくてはならないインフラになっている。

 

「こだわり」のiPhoneアクセサリ

 

現在イチオシのアクセサリが、10月10日発売予定の「JACKPEN」だ。普段はiPhoneのイヤフォンジャックに挿しておき、いざというときには向きを反転することで超小型のボールペンへと変身する。

 

PATCHWORKSブランドの「Alloy X MONO」は航空機グレード素材のアルミニウムバンパーで、0.9mmという超薄型が特徴。耐衝撃性を保ちつつ、アップル製品特有なユニボディのデザインを最大限に活かすための設計とカラーバリエーションになっている。

 

直営店のコンセプトにも「こだわり」

秋葉原の直営店舗「SHOWCASE」では、安心して購入できる店作りをコンセプトに、各種アクセサリの試着や無償の永久保証サービスを提供している。【URL】http://www.i-showcase.jp/

 

SHOWCASEでは店舗にマネキンを設置し、ファッションブランドとiPhoneアクセサリをコラボレーションするプロジェクトを実施している。季節やシチュエーションに合わせたコーディネートを入れ替わりで展示することで訪問者がアクセサリを利用する具体的なシーンを想像しやすくする狙いがある。【URL】http://blog.shop.i-showcase.jp

 

田村社長の鞄の中!

❶以前はMacを使っていたこともあったが、海外送金など銀行取引に使えないケースがあったため、現在はソニーのバイオを使用中。「Mac対応の銀行も増えてきましたが、国内の対応はまだまだといった印象です。もっともパソコンは毎日持ち歩くということはなく、8割以上の業務はiPhoneだけで行っています」

 

❷海外出張の多い田村さん、パスポートと電源プラグ変換コネクタはカバンに常備。「最近も韓国、中国、イギリスに行きました。ロンドンは14時間の滞在というハードスケジュールで“ウコンの力”も欠かせないアイテムかもしれません(笑)」

 

?メインの仕事道具はiPhone 5c。24時間フル稼働するため外出時には外部バッテリは欠かせない。出番は少ないが、イベントの際のカード決済に「PayPal Here」を持つことも。「イヤフォンジャックには普段はジャックペンを挿しています。空港などでiPhoneしか持っていなくても書類にサインしたりできるのが便利ですね」

 

【取材後記】
ジャックペンはツイッターでホリエモン(堀江貴文氏)が「面白い」と一言呟いたことできっかけで注目された。「すぐにコンタクトを取って話がまとまりましたが、これはかなりラッキーなケースで最近はベンチャー企業を新たに発掘するのは難しくなってきています」