ディーアンドエムホールディングスで働く狩野さんを訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

仕事でもアップル、プライベートでもアップル

ディーアンドエムホールディングスで働く狩野さんを訪ねる

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

 

狩野徹也(かの・てつや)

株式会社ディーアンドエムホールディングス 国内営業本部ディストリビューター営業部課長。B&Wブランドのマーケティング担当として国内外および社内営業部門との架け橋を務める。

 

神奈川県川崎市に本社を構えるディーアンドエムホールディングスは、2005年に音響・映像機器メーカーのデノンと日本マランツが経営統合した持株会社だ。狩野徹也さんは現在、同社国内営業本部でB&W(バウアーズ&ウィルキンス)など海外オーディオブランドのマーケティングを担当している。

狩野さんが、統合する前の日本マランツに入社したのは1980年代初頭。学生時代から軽音楽に親しみ、プログレ(プログレッシブ・ロック)やコンピュータ・ミュージックを聴くのが大好きで、YMOからアンダーグラウンドシーンのテクノポップバンドまで追いかけてきたそうだ。当時の音響機器業界はオールインワンの「高級ラジカセ」の全盛期であり、アナログレコードからデジタルミュージックへの大転換を迎えつつある時期でもあった。アンプやプレーヤなど音響機器に強い興味と憧れを持っていた狩野さんが、高級ブランドとして知られていたマランツを志望したのも自然な流れだった。入社後、営業部に配属されて間もなく一般向けのCDプレーヤが各社から登場し、狩野さんもセールスマンとして「全国を飛び回って販売店や大学生協でCDプレーヤを売りまくった」という。それ以来24年の間、営業畑一筋で音響機器の販売に携わることになる。

 

 

 

Macとの出逢いは90年代半ば、当時の配属地であった大阪でのことだ。会社近くにあったキヤノン販売のショップ店頭で見かけたモノクロ画面のPowerBook 145Bが気になり、ショップに訪れて触っているうちに奨めもあって購入したという。

「当時はモバイルといってもパソコンを使って客先でプレゼンするという時代ではありませんでした。出社したら見積書を整理してカタログをカバンに詰め込んで外に行くわけですから、実際のところ持ち運ぶこともできませんでした(笑)。それでもクラリスのドローソフトで書類用の絵を作成したり、とても使いやすかったのはよい思い出です」

同時期に国内での販売代理を開始したB&Wのフラッグシップスピーカ「ノーチラス(Nautilus)」の製品発表では、Power Mac 7200を使ったデモンストレーションも行った。業務で使用するコンピュータの種類を選べるおおらかな社風ではあったが、次第にオフィス内でウィンドウズPCが広がるにつれ、狩野さんもMacから一時期離れることに。職場環境と共通のプラットフォームで使えるPCをしばらく利用していた。

 

 

 

【取材後記】
B&Wはイギリスのアビー・ロード・スタジオでラウドスピーカが採用されたことでも知られるオーディオのトップブランドの1つ。ハイエンドの800シリーズからイヤフォンまでモートン・ウォレン氏がデザインを手がけるなど、一貫性のあるサウンドとデザインポリシーに定評がある。

 

狩野さんがプライベートで再びMacを使い始めるようになったのは2007年頃、きっかけは家族でも簡単に使えるコンピュータが必要になってきたためだという。当初はエクセルやパワーポイントなど職場で使うソフトとの互換性は気になったものの、実際に使い始めればWEBでの調べ物やメール、キーノートなどでもまったく不都合は感じなかった。

「現在も設計部門など専用ソフトを使う部署はウィンドウズが中心ですが、私が5年前に異動したマーケティング部門では申請すればMacの利用も認められています」

一般的には法人向けウィンドウズPCに比べると割高感のあるMacだが、マーケティング部がビジュアルを重視した資料を取り扱うこと、会社のグローバル化に伴い海外とのやりとりでMacが標準的なプラットフォームとして用いられていることが導入の決め手になった。

「イギリス、カナダ、アメリカのブランドとのやりとりが多いのですが、特にカリフォルニアの会社で『Macが100%使われている』事実が、我々もそれに合わせてMacを使う正当な理由として認められました」

社内業務では海外から受け取ったキーノートの資料をそのまま翻訳して自分たちのプレゼンに活用することもあれば、ブートキャンプ環境で国内営業向けにパワーポイント形式に変換した資料を作成することもあるという。また、イベントや展示会などではマーケティング部門所有のMacBookエアを持ち出し、自社製品のスピーカなど音響機器とPCオーディオを組み合わせたデモ用に活躍しているとのことだ。なお、デモ用に使用するデータ音源の8~9割はMacで管理しており、ピュアオーディオの再生には「オーディルバーナ」などサウンドの解像度が高くダイナミックレンジも広いプレーヤソフトを活用しているとのことだ。

さらに、会社支給の携帯電話もフィーチャーフォンからiPhone 4に変更され、現在はiPhone 5cにアップグレードされるなど「この数年で気がつけばアップル製品に囲まれた」仕事環境になっているという。

「もちろん、アップルとの関わりという意味においては日常的な業務だけでなく、製品にも活かされています。B&Wでは2010年からiOSデバイスと組み合わせて使えるポータブルヘッドフォン/イヤフォンも展開していますし、『A7』『A5』というワイヤレス・ミュージックシステムでは、アップルのエアプレイ規格を採用しています。米国内の拠点ではクパチーノのアップルとも頻繁にコミュニケーションを取っていて、ワイヤレス環境でキラーとなるオーディオ製品が欲しいといわれたこともありますよ」

 

定評ある音響技術とデザインの融合

 

高品質なリアルレザーの内側に適度な弾力を持つ形状記憶フォームを採用したイヤーパッドは着脱式で、マグネットによってバッフルに固定されている。メンテナンスや長期使用後の交換が容易なだけでなく、ジャック部分からケーブルを取り外し別途購入したアップグレードケーブルに交換する「リケーブル」といった楽しみ方もできる。

 

「P7」(実売5万円前後)はオーバーヘッド型ヘッドフォンの最上位モデル。ブラックとシルバーを基調としたB&Wらしいクラシカルなデザインが美しい。B&Wのスピーカをそのまま小さくしたような直径40ミリのドライブユニットから流れるサウンドはハイクオリティで自然な印象。あなたの音楽生活を楽しくしてくれるだろう。

 

マーケティング部門はMacが必須

狩野氏が所属するマーケティング部門では海外とのやりとりが日常的に行われ、イギリスやアメリカから送られてくるプレゼン資料や営業向けのトレーニングガイドのほとんどは「キーノート」で作成されている。業務では国内向けの資料の翻訳やパワーポイントへの変換などにMacが活用されている。自ら「ページズ」で見栄えのよい資料を作ることもある。

 

狩野さんの鞄の中!

 

【1】会社までの往復2時間になる通勤時間は、iPhoneで好きな音楽を楽しんでいる狩野さん。普段使っているヘッドフォンはB&Wの「P5」。ハウジング部分を平らにして付属のポーチに収納できるので、カバンの中のアイテムが傷つかない。「音質を優先してアップグレードケーブルの『PEC/P5 ver.2』にリケーブルしています。夏場になったら装着感の軽いP3を使っています」。

 

【2】会社支給のiPhone 5cホワイトモデルと、音源チェックに用いている個人用のiPodタッチ32GBモデル。iPhoneではサイボウズのクラウド型WEBデータベースアプリ「kintone」を出怠勤管理に用いている。クラウド経費精算の「Concur(コンカー)」も利用中。「iPhoneはテザリングが使えるので、モバイルルータは解約してしまいました。出張の際の荷物は昔に比べて格段に減りましたね」。

 

【3】デモに使う会社のMacBookエアとは別にプライベートMacとしてMacBookプロ13インチ(Mid2010)を所有する。「Firefox」「Skype」「Dropbox」などビジネスの定番ソフトが並ぶ一方で、ピュアミュージックプレーヤの「Audirvana」があるのが音響機器メーカー勤務ならでは。「イベント会場などでディーアンドエムの製品はMac専用なのかと聞かれてしまうこともありますが、そんなことはありません(笑)。ですが、弊社のブランドイメージを考えるとMacと合わせて使うのが最適ですね」。

 

【4】Mac関連機器で持ち歩いているのがaudioquest(オーディオクエスト)社のUSB/DAC「DragonFly v1.2」(右)と「プロジェクタにつなぐのに必須アイテム」という国内未発売のミニディスプレイ-HDMIアダプタ「Mini DP to HDMI Dongle」(左)だ。ペリフェラルもオーディオメーカーならではのこだわりが詰まったものを使うのが狩野さんのポリシー。

 

【取材後記】
米国のオーディオブランド、audioquest製品もディーアンドエムが国内販売代理店だ。USB/DACのトンボのマークは再生するサウンドのレートによってLEDの色が変化するなど遊び心と実用性を兼ね備えている。ケーブルの編み込みなど品質の高さがウリでもある。