天からバイオリンが降ってきた! その上映画も……。
中学二年の一学期、学校に月謝を払いに行ったら、どうした間違いか支払いは済んでいると言われた。この宙に浮いたお金を家に持って帰ったら、家族会議の末、母が言った。
「それじゃあピアノは無理だけど、バイオリンなら買えるかもしれないわ」
次の日、一人で日本橋の三越に行き、鈴木バイオリンの一セットを買ってきた。値段がちょうど同じくらいだったのが不思議だった。家の近くに芸大の先生が住んでいらして習うことになる。ピアニストになる夢はピアノを売られてしまった時点で消えていたが、そうならヨシ! バイオリン弾きになろう! プロになるには年齢的に遅いと云われたが、構うものか、将来はこれで働こう。