2018.11.13
Web多言語化対応の最適な「考え方」 “ 訳しておけば…” は、失敗する!
外国人ユーザーを意識するなら、日本語以外の対応は必須です。ここでは、大前提となるノウハウや考え方を身につけましょう。Webサイトの多言語化のためのテクノロジーを提供するWovn Technologies(株)の取締役COO、上森久之さんに話を聞きました。
なぜ必要? 誰に向けて用意する?
「Webサイトの多言語化」をするにあたり、出発点は「なぜ」やるのか、です。Webサイトの規模、サイトを運営する組織や企業の規模の大小にかかわらず必要なのは、「なぜ」という目的の整理です。ここをはっきりさせましょう。
多言語化を突き詰めると、英語だけではない、中国語も? 他の言語は?となります。目的に即してターゲットを明確化できると、対応言語の見通しが立っていきます。
私が所属するWovn Technologies(以下Wovn)は、これらを「Webの外国人戦略」と称しています。まず着目してほしいのが、“外国人”と言っても、一括りにできないこと。インバウンド向けを念頭に置いた、旅行などで日本に遊びに来る訪日外国人のほかに、もともと日本に滞在する(けれど日本語が苦手な)在日外国人、現地に滞在する在外外国人と、大別して3種類あり、それぞれ対策に違いも出ます(01)。
在外外国人向けだと、メーカーの海外展開や越境EC対策。一般の暮らしに根づく在日外国人向けだと、国内のサービスインフラにかかわるサイトがその対象になります。インバウンドと呼ばれる旅行者には、単に訳すのではなく観光客向けの情報へとアレンジしていないと、機会損失を招きます。
違和感のない状態は、翻訳だけではつくれない
「なぜ」については、個人ブログの翻訳という規模から企業の海外戦略という規模まで、幅広いでしょう。となると、「翻訳」や「多言語化対応」という言葉だと、取り組むべき範囲を誤解しかねません。それらの問題を含んだWebサイトのローカライズ(外国人向けの最適化)と考えるべきです。
すると、上図02の「なぜ(Why)」「何を(What)」「どのように(How)」という順番での対応が見えてきます。
「なぜ」で前述のターゲットと目的を洗い出したら、01の背景(言語/文化/システム)を踏まえる必要性が見えてきます。そこで次の「何を」へ。ここで5つの課題が待ち受けています(P058、03)。
1つ目が「翻訳」。多くの人が真っ先に気になるところでしょう。
主に機械翻訳か人力翻訳か。予算や翻訳のボリュームなどで適宜判断していきます。最近の潮流では、MTPE(マシントランスレーションポストエディット)という方法が定着しつつあります。機械翻訳でベースの「下書き」をつくる考え方で、下書き段階以降に人力で細かく調整すれば、ゼロから人力翻訳するより時間と手間が軽減できます。
機械翻訳の精度が高まっている背景があるので、ボリュームが多いほど人力だけで進めるのはコストも時間も現実的ではなくなります。ゼロから人力で進めるより、タイピングミス、スペルのミスが軽減できるメリットもあります。
あとは下書きに、翻訳のための「用語集」を加えられると、さらに精度が高まります。企業、メーカーの商品名など固有名詞の対訳を、あらかじめサイト運営者側が定義してリスト化しておきます。下書きにリストを照合できれば、固有名詞が出てきても訳が一定します。ほかにもよく出てくる表現に対して、決まった表記をリスト化するのも手です。
それらを翻訳用語集として一元管理できれば、Webサイトのほかにアプリやメール、オフラインなど別の発信源の多言語化対応にも随時利用できます。