配送と自動運転の課題を解決する無人自動運転車デリバリーサービス「nuro」|WD ONLINE

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Bay Area Startup News Web Designing 2018年12月号

配送と自動運転の課題を解決する無人自動運転車デリバリーサービス「nuro」

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

無人自動運転車の可能性

「人工知能」「センサー」「自動運転」。これらの最新テクノロジーを活用して社会変革を進めようとしているスタートアップの一つが、シリコンバレーのマウンテンビューに本社を置くnuroです。

元GoogleのエンジニアであるJiajun Zhu氏とDave Ferguson氏が始めたこの企業は、ロボット工学やAIなどの専門家が集まり日常生活を便利にするサービス、テクノロジーの開発に重点を置いています。そんな同社はまず、「物のデリバリー」に焦点をあて、主にお店から配達先である消費者の家を結ぶいわゆるラストワンマイルデリバリーを実現する無人の自動車、その名も「nuro(ニューロ)」を開発しました。

もともと出前などのデリバリーサービスが一般的ではないアメリカでは、ここ数年で物流に対してのイノベーションが急激に進んでおり、都心部を中心に、レストランや店舗からユーザーのいる場所までの運送を代行するようなサービスが続々と登場してきました。例えば、配車サービスで有名なUber Tecnologiesが同社のシステムを応用し、レストランのメニューをデリバリーするサービス「Uber Eats」をはじめ、 「Postgram」「Doordash」「Instacart」といったサービスが注目を集めています。

これらのサービスが活況になってきた一番の理由がスマホの普及で、内蔵のGPS機能でユーザーの位置を自動感知し、「今、すぐ、ここ」の感覚でデリバリーを頼むことが可能になりました。その一方で、物を運ぶためには運ぶ人が必要で、最近の景気の良さから人件費も高騰しており、シェアリングエコノミー系サービスの利益確保には大きな課題があるのも事実でした。

そこで検討されているのが、自動運転。今までは人が物を運んでいたのを、無人自動車やロボットが運ぶことで、人件費が削減され、利益確保することで、ユーザーメリットの最大化が可能になるというコンセプトです。

その一方で、自動運転を実用化するにはかなり多くの課題があるのも事実です。 これまでにも各自動車会社や、Tesla、Googleの子会社のWaymoなどがこぞって人を運ぶための自動運転車両の開発を進めてきました。しかし、2018年のUberによる自動運転中の事故の事例からもわかるとおり、安全性の確保はかなり難易度が高く、行政としてもなかなか認可を与えにくくなっています。

nuro
Google系列の自動運転企業Waymo出身のエンジニア2人が立ち上げた企業であるnuroは、2018年1月に近距離の荷物輸送に特化した無人自動運転車両を発表しました。「ロボットで日常生活を便利にする」という使命のもと、デリバリーサービスや自動運転車の課題に一石を投じるサービスになりそうです

 

無人運転であることのメリット

そんな中で、nuroは、少量のデリバリーに特化した小型の無人カーを開発し、主に市街地でのデリバリーサービスの展開を進めています。人間が乗る必要がないことから、通常の車両と比べかなり小型サイズの車両が実現可能で、移動速度も低く抑えられています。それにより、事故による危険性も下がるため、実現性をアップさせることができます。

「R1」と名付けられた第1号の車両は全長が普通自動車の横幅ほどで、かなりコンパクト。そこに2つのデリバリーボックスが設けられています。動力元は電気で、1回の充電でおおよそ24時間の稼働が可能。車体前方にはフロントグラスらしきものがありますが、これはあくまでダミーで、歩行者に違和感を与えないためのデザイン的措置です。そして、市街地の路地を走行するために、通行人にぶつからないようにセンサーが感知次第「Excuse me」などの音声を発する仕組みにもなっています。 

ユーザーは、モバイルアプリでデリバリーをオーダーし、車両の位置もアプリで確認することができます。nuroが到着すると、ユーザーは事前に配布されているコードを車両に入力すれば、デリバリーBOXの蓋が開く仕組み。これまでにない、スムーズなデリバリー体験を受けることが可能になります。

 

大手スーパーで実験的運用開始

これまでプロトタイプでのテストを繰り返していたnuroですが、2018年9月に米大手スーパーマーケットチェーンであるKroger(クローガー)とパートナーシップを結び、アリゾナ州スコッツデール市にて、現地のスーパーマーケットの商品のデリバリーを実験的に開始しました。

ユーザーはKrogerのオンラインサイト「ClickList」、もしくはnuroのアプリを使い、注文金額にプラス5ドル95セント(約660円)すると、品物1つからこのデリバリーサービスを利用することが可能です。

今回のサービス提供開始に対して、nuroのCEOであるDave Ferguson氏は「地域の人々に対して、安全で便利なサービスを提供開始できたことを非常にうれしく思います。今後も、より良いサービス改善を続けて行きたい」と語っています。

 
モバイルアプリで注文すると、無人自動運転車がお届けしてくれます。自動運転車両は屋根に搭載されているLIDARやレーダー、カメラなど各種センサー類で常に周囲の状況を判断し、低速運転で安全に運行されます。人が乗らない設計なので、車両はコンパクトに、車内はさまざまな品物に対応できる収納スペースを確保しています
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

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2017年、訪日外国人の数は2869万人にのぼり、毎年400万人のペースで伸びてきているといいます。政府は、2020年に4000万人に乗せるという計画を公表しており、今後ますます国をあげて「訪日外国人増大」の波は確実に大きくなっていきます。

日本国内に向けた商品展開や売上に行き詰まりを感じている企業をはじめ、当然この「訪日顧客」の存在を無視する手はありません。さらに言えば、インターネットにより訪日外国人だけでなく世界中の人々に自社の商品・サービスの情報を届けることができる時代に、国内だけを見て一喜一憂していていいのでしょうか?

…とはいえ、

じゃあ何をすればいいのよ?
日本との文化の違いは大きな壁じゃないの?
どこの国を狙えばいいかわからない
売りたい商材、狙う国によってウケるアプローチは違うよね?

などとおっしゃる方も多いでしょう。そこで、海外を相手に「売り込む」「呼び込む」「買ってもらう」3つのアプローチを軸に、海外マーケティング戦略の基礎から1年で実現できる具体的な手法・考え方を、はじめの一歩から教えます。


[第1部]
■海外進出のために考えるべきことと準備すること
 ●売るのは「モノ」から「コト」へ
 ●海外の人に向けて、自社商品は何がウリなのか
 ●海外顧客に対応するためのWebでの受け入れ対策

■[Webで海外を相手にするアプローチ①]海外進出(アウトバウンド)
 海外に売り込む
  海外で取り扱ってもらうにはまず何をすればいい?
  ルールや法律はどちらの国のものが適用される?
 
■[Webで海外を相手にするアプローチ②]インバウンド
 ●日本向けと海外向けでコンテンツマーケティングの考え方は違うのか
 

■[Webで海外を相手にするアプローチ③]越境EC
 ●海外から自社ECショップへの集客術
 ●関税・免税はどう対処すればいい?


など

[第2部]

■世界地域別:進出とらの巻
第1部「海外を相手にする3つのアプローチ」を、自社ではどの国に仕掛ければいいでしょうか?
市場、文化、国民性、言語、法律、税制などアジア、ヨーロッパ、アメリカ、その他。地域独特の課題とクリアするヒントを解説します。

●自社の商品はどの国が狙い目?
 ターゲットにする国の選定基準

●各地域別攻略のヒント
 中国、東南アジア、アメリカなど


[第3部]

■言葉の壁をのりこえろ!

・ただの自動翻訳では客は集まらない!
・翻訳サービスの実際:作業期間・費用感
・サイトの海外対応で必ずぶつかる諸問題をできるだけ低予算で解決する
・テキストを使わないアプローチ



[第4部]

■海外戦略は決済対応が基本!

・地域別決済システムの有利不利・そのキメテ
・各国の決済事情への対応方法
・海外との決済関連の注意点
・低コストで導入できるサービス

など