2018.08.02
最新の“ 就活”データから新卒&中途採用のニーズを読み解く 働く側のニーズを知る
ここまで主に人材を採用する企業側の視点で最新の潮流や具体的施策、事例について解説してきた。ここからは、実際に働く側の立場である新卒および第二新卒も含めた中途採用側が企業に対して抱いている思いや選択の際に重視するポイントを数字で読み解いてみよう。
空前の「売り手市場」というのは本当か?
この3、4年の就活市場を表すものとして「超売り手市場」という言葉が用いられることがある。総務省の調査によると2018年4月の完全失業率は2.5%と低水準で推移しており、厚生労働省による同月の有効求人倍率は1.59倍と正社員については過去最高の水準を記録している(いずれも季節調整値)。確かにこの数値だけ見れば、景気回復を背景として企業側の採用活動が活発化し、新卒・中途採用問わず求職者側に有利な状況になっていると考えるのが自然だろう。
ところが、実際に就活を行っている新卒学生の声を聞けば「書類審査の時点で落とされる」「30社受けても内定が取れない」など厳しい現状も窺える。こうした採用における需給ミスマッチの要因の1つとして挙げられるのは、根強い「大企業・有名企業志向」の強さだ。
確かに大企業には事業のスケール感や福利厚生制度の充実など魅力的な点は多い。しかし、それゆえに応募倍率が中小企業と比べ極端に高くなっている。リクルートワークス研究所が発表した2019年卒の「大卒求人倍率調査(大学院卒含む)」によると、従業員規模が300人未満の民間企業では求人倍率が過去最高の9.91倍、一方、300~999人では1.43倍、1000人~4999人では1.04倍、5000人以上では0.37倍となっている。
つまり、「超売り手市場」なのはあくまで中小企業の話で、いわゆる大企業では1件の求人を2~3人で競い合っていることが裏付けられている。就職情報サイトがオンラインで実施する「学生就職モニター調査」においても、半数以上の新卒学生が、大企業志向であることがわかる(図1)。
最近の新卒学生が「給料」よりも重視すること
では、このような状況下で、学生はどのような基準で企業を選択しているのだろうか。2019年卒については前述の学生就職モニター調査に詳しく記載されていた。ここで注目したいのは「企業を選ぶときに、あなたが特に注目するポイント」という項目だ。
データには月次の変化や性別、専攻といった属性別にランキングで集計されているが、本記事では全体的な傾向をつかむために合計の数字を元に注目すべき要点のみをご紹介しよう。
このランキングでは「自分が成長できる環境がある」や「社員の人間関係が良い」といった項目をもっとも重要視するポイントとして挙げる傾向があり、時期や性別、専攻などでランキングの順位が大きく変動することはない。
そして、もっとも注目する項目を1つだけ選ぶ場合でも、最大3つの複数項目から選んで回答する場合でも同様の傾向が見られ、最近の新卒学生が企業に対して自分がそこで社会人として通用する人材へ成長できることを期待しているのがわかる。
また、「福利厚生や制度の充実度」「給与や賞与が高い」「希望する勤務地で働ける」といった働き方についても関心が高いことが示されているが、これは働き方が注目されている昨今では当然の要望だろう。それよりも、自分のポテンシャルを引き出せることを重視している点が注目に値する。
なお、その一方で上の図には含まれていないランキング下位の項目としては「商品企画力がある」「職業別採用がある」「平均勤続年数が長い」といった項目がある。また、「女性が活躍している」のように男女で注目度が10倍以上分かれる項目もあるなど示唆に富んだデータであったのでチェックしてほしい(https://saponet.mynavi.jp/release/)。