2018.07.30
自社の力で編み上げた新卒採用サイト 入社1年目の社員をプロジェクトリーダーに抜擢
自社の求人・採用サイトをつくるとき、Web制作会社に頼りっぱなしにしている企業は多いはずだ。しかし、自分たちが望む人材を本気で集めたいと思うなら、自ら内容を考え、自ら構築していくのが一番の近道ではないだろうか。
パートナーシップにより社内にデザイン組織をつくる
自社の採用サイトづくりを、Web制作会社に丸投げしていないだろうか? 確かに経験豊富なWeb制作会社なら採用サイトづくりの引き出しも多く、簡単なヒアリングだけでもツボを押さえたものが出来上がるだろう。しかし、そのプロセスでできた求人サイトで、企業の本当に望む人材が集まるだろうか。
企業が求める人材を集めるには、自分たちがどんな会社か、どんな人材を求めているのかをハッキリと伝える必要がある。採用サイトづくりでは、企業がその点を主体的に考えて制作会社に伝えることが望ましいが、企業の日常業務に携わっていない制作会社とのやり取りでは、話の齟齬や思いの温度差が生じてしまう懸念もある。一番良いのは、企業の理念や思いを社員自らが採用サイトに込めていくことではないだろうか。
もちろん、デザイン会社ではない一般の企業がWebサイトをつくり上げるのは、実際にはなかなか難しい。しかし、SBI証券の新卒採用サイトは、社内の社員が、しかも昨年入社したばかりの新入社員が制作の指揮に当たったという。そして、そんな採用サイトづくりのウルトラCをやってのけた背後には、UI/UXに特化したデザイン会社、グッドパッチとのパートナーシップがあった。
限られた時間の中で成果を出していく
話は、今年の新卒採用サイトが出来上がる数年前に遡る。前職も金融業界でマーケティングを担当していた阿部佳明さんは、3年前、SBI証券に入社する際に、「UXの共通化」という課題を託された。
「SBI証券には複数の金融商品・サービスが存在していますが、それまでは部門ごとに縦割りで開発が行われていたためデザインが共通化されていなかったのです。そこにUXデザインという『横串』を通してほしいと伝えられました」
阿部さんは、当時のデザイン担当と話し合いを重ねながらUXの共通化を図ろうとしたが、なかなか思うようにいかなかったという。悶々とする時間ばかりが過ぎていったが、そんな状況の中で出会ったのが、UXデザイン会社のグッドパッチだった。
阿部さんは、グッドパッチに協力を仰ぎながら、社内にUXデザイン組織をつくり上げたいと考えた。グッドパッチ側も「SBI証券にデザインカルチャーをインストールすることだ」と考え、協力を引き受けた。しかしパートナーシップを組むにあたって、グッドパッチから阿部さんに予想外の一言が投げかけられた。
「自律したデザイン組織をSBI証券の中につくる上で、私たちがいつまでも関わり続けるのが良いとは思いません。2年を目安と考えてください」
そこから、SBI証券とグッドパッチの怒涛の歩みが始まった。最初にとりかかったのが、SBI証券のスマートフォンサイトの構築だ。SBI証券の社内には、まだUXデザインの費用対効果に対して懐疑的な声もあり、早い段階で結果を出す必要もあった。そこで阿部さんは仮説から検証までのサイクルを約1週間という驚異的なスピードで回し、主要KPIの達成率を7.6%→9.6%に高めることに成功した。