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せかいと未来 Web Designing 2018年8月号

まかないさんが“やりたいこと”を“できること”よりも優先する

東京・神保町に位置する定食屋「未来食堂」をご存じでしょうか? エンジニアとして勤めた小林せかいさんが、オープンソースの概念を飲食業で実践する素敵なお店です。そんな小林さんの頭のなかをオープンにするこの連載。はたして、どこにたどり着くのでしょうか!

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東京・神保町に開店した“ふつう”をあつらえる、ふつうじゃない定食屋。「まかない」「ただめし」「あつらえ」といったオープンな仕組みと、店主(女将)の想いに共感する人たちが日々集う“場”として、食事をメインに、新たな「価値」と「出会い」、「居心地の良さ」などを提供し続ける。 http://miraishokudo.com/

 

採用がない、雇用もない。そんな会社を想像できますか?

未来食堂は小さな定食屋。従業員は私一人です。しかし、共に働く人々は年間450人を超えます。というのも、未来食堂には50分働くと一食無料になる「まかない」という仕組みがあり、この「まかない」を通じてさまざまな方がお店の運営を助けてくれているのです。

「まかない」の参加条件は一度来店すること。年齢制限もありません。やる気さえあれば誰でも参加可能。来る者拒まずですから“採用”というふるい分けが存在しないのです。また「まかない」は、継続的に働く契約を両者で取り交わす“雇用”もありません。再び「まかない」に来るかどうかは、まかないさん(「まかない」をされる方)の自由です。

こんな未来食堂にとって一番大切なことは「まかないさんが“やりたいこと”を、“できること”よりも優先する」ということ。

例えば接客が80点、調理が30点のまかないさんが来てくれたとします。もしこの方が「私は調理がしたい」と希望するなら、調理側を担当してもらうのです。効率的に考えるなら、接客をしてもらった方がメリットは大きいですよね。しかしまかないさんの立場で考えてみると、自分がやりたいことができないのですから、再び「まかない」に来てくれることはなくなります。50分間は効率的でも、長い目で見ると戦力を失ってしまうのです。

たとえはじめのうちは能力が低くても、「やりたい」という強烈なモチベーションがある人は、みるみるうちに実力をつけていきます。そしてチャレンジできる土壌があるとわかれば、意欲的に「まかない」に来てくれます。強力な助っ人になるまでに、時間はかかりません。

採用も雇用もなく離職自由な職場で、また来てくれるかどうかはまかないさんの心持ち一つで決まります。だからこそ非効率でも、その方のやりたいことを優先するのです。

「お金を払って雇っているのだから、会社がやってほしいことをやってもらって当然」。未来食堂は、そんな考え方のちょうど真逆に位置しています。

SNS採用やTwitter転職の例を見るまでもなく採用の機会は多様化し、それにともない働く側のモチベーションも多様化しています。“雇う・雇われる”の関係を超えた未来食堂のあり方は、極端ではありますが、きっと何かしらのヒントになると思うのです。”未来”の食堂ですからね。

 
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Text:小林せかい
東京工業大学理学部数学科卒業後、日本IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めた後、1年4カ月の修行期間を経て「未来食堂」を開業。自称リケジョ。その他、詳しいプロフィールは公開されている情報をご覧ください。 https://goo.gl/XpwnMQ

掲載号

Web Designing 2018年8月号

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2018年6月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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