2017.05.11
「AI」と「やる気」=人間らしさ 未来食堂にとってのAIとは?
東京・神保町に位置する定食屋「未来食堂」をご存じでしょうか? エンジニアとして勤めた小林せかいさんが、オープンソースの概念を飲食業で実践する素敵なお店です。そんな小林さんの頭のなかをオープンにするこの連載。はたして、どこにたどり着くのでしょうか!
こんにちは。“あなたの「ふつう」をあつらえる”未来食堂のせかいです。
今回のお題は「人工知能」。
先日、コンピュータや人工知能の研究で知られる、筑波大学助教授の落合陽一さんの著作を読んだのですが、その中でひときわ印象に残ったのは「人間がインターフェイスとして適しているポストは、機械に置き換えられず人間の仕事として残り続けるだろう」という一文でした。「人間らしさ」という言葉で曖昧に定義されているものを、単なる“インターフェイス”と捉えるとは…。衝撃でした。
私は、定食屋の店主というものすごく“人間ぽい”ことをしていますが、以前はIBMやクックパッドで働くエンジニアだったこともあり、人工知能について「人間の仕事を奪う不気味なもの」とはまったく思っていません。人間なんてミスが多いし、コンピュータの方がよほど正確です(プログラミングを書いていた私が実感を込めて申し上げます)。たとえ、未来食堂という定食屋の仕事がすべて人工知能に取って代わられたとしても、私は良いと思っています。やさぐれているわけではなく、単に、人間がやるに及ばないことは、コンピュータにやらせればいいと考えているだけに過ぎません。ただ、どんなにコンピュータが進歩しても、どうしても人間にかなわないところが一つだけあるようです。
落合さんの本によると、「やる気」です。
その一節を読んだ当初は「やる気かあ、そんな精神論みたいなことどうでもいいなぁ」と素通りしたのですが、「いやいやこれは重要なことだ」と後になってじわじわ気がついてきました。というのも、私自身も『やる気』によって“人間らしい創造的なこと”をしていると思い当たったからです。
例えば未来食堂の仕組みである“まかない”。これを生み出した背景には「一度は来店した事のあるお客様が『お金がなくてもう未来食堂のご飯が食べられない』と呟いたとしたら、絶対に一食は出してあげたい」という強い想いがあります。50分の手伝いで一食無料。お金ではなく、時間で支払ってもらうこの形は、強い想い、言い換えるなら、それこそ「やる気」がないと実現しなかったものでした。
私はここに、人間がまだ人間としてできることを見るのです。「絶対にこうしたい」「これを実現させたい」という強い衝動、ルールを突き破るような強い感情、そういったものは確かにコンピュータにはないものでしょう。
「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」を目指す未来食堂は、果たして人工知能を“受け入れる”のでしょうか。よくわかりません。ただ、彼らがそう願うのであれば、それをどこまでも受け入れたいと思います。そこに私の魂からの「やる気」があるからです。そしてその姿、人工知能と共生するあり方はきっと、徹底的に効率的な定食屋が見せる「人間らしさ」にほかならないのです。
※この連載のネタ帳はGitHub Gistにて公開しています。
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