2020.09.01
実践! 成功するウェビナー ~準備と開催方法~ 熱量を伝え満足度を上げてもらうためには
ウェビナーを成功させるには、従来のリアルで開催していたセミナーとは違った考え方・準備が必要です。BtoBマーケティングを手がけるタービン・インタラクティブの志水哲也さん、大西舞さんにそのコツを伺いました。
Illustration:大野文彰
1. ウェビナーの企画の立て方
なぜ企業はウェビナーを開催するのか
会場に大勢で集まることが難しい状況である昨今、ウェビナーへの注目が高まっています。従来のセミナーの代用としてはもちろん、BtoB企業にとっては大事なリード獲得の場ともなる大規模な展示会が開催できなくなっているため、その代替手段としてウェビナーを開催するという企業も多いです。
ウェビナーには会場費が抑えられ、地域問わず参加してもらいやすいという大きなメリットがあります。配信するURLを参加者の方に知らせるだけで、いつでもお金をかけずに開催することができます。そのため、これまでは会場費などの兼ね合いを考えると開催しづらかった、セールスに直結する内容でなくてもやりやすくなります。狭く深い話題を少人数に向けて届けるということをやってもよいかもしれませんし、毎日開催することも可能です。
参加者にとっても、会場までの移動時間やコストがかからないため、参加しやすいというメリットがあります。そのため、集客がしやすくなります。
特にBtoBのセミナーでは、参加したいと思った企業の方がセミナーへ出かける場合は、業務時間をセミナーに当てるべき効果や正当な理由を会社に伝え、許可を得て出かける必要がありました。しかし在宅ワーク中やオフィスのデスクから直接参加できるようになると、そうした手続きも不要になり、参加のハードルが下がるのではないかと思います。
リアルのセミナーと企画の立て方はどう違う?
集客しやすいとはいっても、今はとても多くのウェビナーが開催されているため、その中でも「参加したい」と思われる企画にしなくてはなりません。ウェビナーを企画するうえで、リアルのセミナーとは本質が違うというのを理解しておくことが大切です。
たとえば私たちタービン・インタラクティブの場合は、Webサイトを核としたBtoBマーケティングの実行支援を行う会社ですが、「御社でもこういうサービスを利用しませんか?」というような直接自社の事業をセールスする内容のウェビナーはやっていません。「当社はこれを売りたいです」という話をしても、あまり見たい人は多くないように思うからです。ではどうしているかというと、興味関心の度合いとしてはもう少し手前にいる、デジタルシフトに興味があるような方々と広く接点を持つことを目的として、彼らが興味を持っているであろう旬なネタを企画するようにしています。ターゲットとしている方々が今見たいものを見せるというのが、企画を考えるうえで重要です。
弊社のウェビナーでは、より幅広い話をしたい場合には、社内の人間だけでなくその道の達人をゲストに招いて話を伺っています。
たとえば4月は、リモートワークを始める企業が増えたので、昔からリモートワークを行っている(株)ソニックガーデン代表の倉貫義人さんをゲストに迎え、リモートワークをどのようにやるとよいかという話を展開しました。5月には、テレワークが推進される中で営業活動はどのように進めていったらよいかという話を、インサイドセールスをやられている(株)エムエム総研の米田光雄さんをお迎えして話しました。
そうやって、デジタルシフトについていろいろな角度から話をするウェビナーを、テレビ番組やYouTubeに近いような感覚でつくっています。回を重ねるごとに、リピーターの参加者が多くなっています。
参加者は、すぐに私たちのセールスの対象とならないかもしれませんが、デジタルシフトをしなくてはと考えている方々が徐々にBtoBマーケティングに興味を持って態度変容し、弊社のサービスに興味を持ってくださることをウェビナーの効果として期待しています。
ウェビナーの開催時間は1時間以内に
ウェビナーでは、リアルのセミナーよりも開催時間を短くしており、弊社で行っているものは、1時間を超えないようにしています。セミナーの場合は、わざわざ会場まで出かけて行ったのに短い時間で終わってしまうと、参加者の満足度が上がりません。せっかく来たからには、ある程度長い時間のコンテンツを用意する方が喜ばれます。しかしウェビナーは、「スキマ時間を利用して見る」という方が多いと想定し、あまり長いのはよくないだろうと考えています。30分や10分といった短いウェビナーをたくさん開催するというやり方もよいかもしれません。
2. 集客とクオリティを高めるための環境づくり
早めの告知と複数回のリマインド
ウェビナーを企画したら、集客のための告知をしていきましょう。SNSに告知投稿する場合は、タイムラインをスクロールしていく中で、どの投稿を見るか/見ないかという判断のスピードが早いので、目に飛び込んだ瞬間に内容がわかるようなタイトルとグラフィックであることが重要です。あまり長々と文章を書いても読まれないので、できるだけ短く伝えるべきことを書くようにします。その企画内容に興味を持ってくれるであろうターゲットに届くよう意識することが大切です。
ここぞという企画のときは、広告出稿をすることも考えられます。なかでもFacebook広告はターゲティングの精度が高いため、ウェビナーのターゲットユーザーに訴求しやすいように思います。これらをしっかりやれば、集客はできるでしょう。弊社開催のウェビナーも、募集をかけるとあっという間に多くの方に申し込みいただけるようになっています。
告知から開催までの期間があまりにも短いと集客が難しくなるため、通常は開催の1カ月~3週間前には告知を始めるのがよいでしょう。弊社では、申し込み時にお礼のメールを送り、そこに開催1週間前に参加URLを送る旨をお伝えしています。たくさんのメールを受信する方は、見落とすことがあるからです。また、前日と当日にもリマインドのメールをお送りしています。ウェビナーは外出を伴わない分うっかり忘れてしまいやすいことも考えられるので、リマインドは大切です。
ただ、企画の意図によってはその限りではありません。先日(株)ブイキューブの佐藤岳さんをゲストに開催したウェビナーでは、少し特殊な告知方法をとりました。2回構成の企画だったのですが、1回目は1週間という短期間の募集で開催しました。その1回目の評判が告知となると見込み、2回目の参加者を増やすことを狙いました。2回目から申し込まれた方には、1回目のアーカイブ動画を共有しました。その結果、1回目から多くの方が参加してくださり、参加者のほぼ100%が2回目も申し込み、さらに2回目からの申し込みも増え、とても多くの方に参加いただけました。
配信プラットフォームの選び方
弊社では、ウェビナーの配信にZoomを使っています。その理由は、昔からWeb会議に利用していて慣れていたこと、私たちが使っているMAツール「HubSpot」と連携してトラッキングできることの2点です。Zoomはもともと会議ツールとして開発されているため、高画質な画像を見せることよりも、そこそこキレイな画質で軽くて安定した通信をできることが強みになっています。画質にこだわるのであれば、YouTube LiveやFacebook Liveの方が向いていいます。ただその分、通信速度が遅くなってリアルタイム性が落ち、数分のタイムラグが発生します。自社にとってどの配信プラットフォームが適切かは、「画質」と「安定性」どちらに重きを置くのか、連携させたいツールとの互換性や投げ銭システムを必要としているかといった機能面を考慮して決めていくのがよいでしょう。
ブランドを毀損しない環境づくり
弊社では、3年前に東京オフィスを構えたときから、配信用の会議室を持っています。もともとは、クライアントとのオンライン会議をきちんとした環境で行うためのものでした。ウェビナーを開催するようになり、現在は配信スタジオとしても活用しています。いま、こうして企業が配信スペースを持つことが増えてきています。
配信機材については、最低限カメラや照明等を用意するようにしましょう。パソコンのインカメラで配信するなど、低クオリティなウェビナーを行うと企業のブランドも毀損しかねません。弊社ではミラーレス一眼レフカメラ3台、照明、カメラを切り替えるためのスイッチャー、カメラのデータをUSBに変換するためのキャプチャボードなどを備えています。カメラは趣味の写真撮影で使うようなものですし、これらの設備を揃えるのにそれほど大きな予算はかかりません。
また、ウェビナーの音や映像の安定性は、ネット環境で左右されます。参加者の環境をどうにかすることはできませんが、配信側で極力よい状態を保つために、有線で繋いで一番速いポートから流すというような細心の注意を払っています。そのために、有線のポートも設置してあります。最低限こうした機材を揃えていないと、よいウェビナーをつくるのは難しいでしょう。