2020.06.24
リモート共創での企画と制作の進め方(1) 効率的でスムーズなプロジェクト進行を実現する
クリエイティブエージェンシーのmonopoは、以前より世界各地のクリエイターと共創しています。そのために、リモートでの制作経験を積み重ねてきました。同社の佐々木芳幸さんと高橋健太さんに、リモートでの制作の進め方やそのメリットを伺いました。
1. 4年間実践してきたリモート共創のノウハウ
monopoがリモートに取り組んできた理由
monopoは、昨年3月にイギリス・ロンドンに支社を設立し、現在は東京とロンドンの2拠点で活動しています。10カ国のルーツを持つメンバーが働いていて、8言語に対応し、自社内だけでなく外部のクリエイターとも国を問わずコラボレーションしています。企業ビジョンとして、「Collective Creativity(集団的創造性)」を掲げていて、世界各地にいる優秀だけれど埋もれているクリエイターたちが表現力を活かす場をつくっていきたいと考え、国境や文化を越えたコラボレーションを推進してきました。そのためには、リモートでプロジェクトを進めることが必須でした。4年ほど前からリモートで世界各地のクリエイターと共創しています。
monopoのオフィスでは、以前から同じ部屋で仕事をしていても、それぞれがチャットやオンライン会議ツールで別の場所にいるメンバーと打ち合わせているという光景が当たり前でした。
クライアントも、国はバラバラです。ヨーロッパでは、リモートでビジネスを行うことがいまや当たり前です。クラウドサインで契約を行い、オンラインでコミュニケーションを取り、多くのプロジェクトを進めてきました。ロンドン支社では、発注から納品までクライアントと一度も顔を合わせないことも多いです。
リモート共創のノウハウ「Remote Natives」を提供
先日monopoがクライアントへ独自に調査したところ、人が集まるのが難しい現状において、53%の企業がWebサイトやCM動画といった広告制作を断念していることがわかりました。確かに広告業界は、飲み会のコミュニケーションが必要だったり、人と会うことを前提とする文化でした。しかし、リモートで制作を行うノウハウを提供することで、広告制作が抱える現状の課題を解決できるのではないかと考え、4月に「Remote Natives」というソリューションを提供開始しました(01)。パッケージにすることは、クリエイターや会社とリモートで共創するやり方の開発を今後もしていこうという宣言でもあります。
そもそもWebサイト制作は制作物がオンライン上のものですし、映像もPC上で編集しているものなので、リモートといっても、やり方はそれほど大きく変わりません。むしろ、リモートによって生じるメリットが多いので、そのメソッドの中には今後も残っていくものがあるのではないかと思います。
メリットの一例を挙げると、欧米の調査ですが、「企業のコストのうち3割ほどをミーティングが占めている」というデータがありました※1。広告の制作・進行における業務も、体感では3割程度がミーティングです。それらがリモートになることで、移動時間やコストなどを削減できます。
また、ミーティングはこれだけコストがかかるものにもかかわらず企業のマネジメントはミーティングのやり方をしっかり学んでいないという状況もあります。リモートによって見直されるこの時期に、ミーティングのやり方を再定義し、教育し直すチャンスと言えます。CXOで必要なのは、CMO(Chief Meeting Officer)かもしれません。
※1 https://www.readytalk.com/meeting-resources/infographics/true-cost-meetings-infographic
東北新社とタッグを組んだ「STUDIO D_STANCE」
さらに5月には、大手映像プロダクションの東北新社と業務提携し、同社の大規模な撮影技術とRemote Nativesを掛け合わせたサービス「STUDIO D_STANCE」の提供も開始しました。これまでmonopoではスモール~ミドルバジェットでの映像制作はやってきましたが、東北新社の持つ圧倒的な技術やノウハウ、1,600人もの人材に弊社のメソッドをインプットすることで、リモートで圧倒的なクリエイティブをつくることができるようになるだろうと考え、提携することになりました。すでにフルリーモートで制作したCM動画を発表しています(02)。
人が集まれない現状は、必ずしもマイナスではないと思っています。これまでの広告制作の現場では、非効率的でおかしな慣習がたくさんありました。たとえば、制作会社のプロデューサーらがクライアントからのフィードバックに対応できるようにと、延々と16時間の会議に参加するといったことが。こうしたことが、制作現場の長時間労働にも繋がっていました。
いまは、制作フローをDX(デジタルトランスフォーメーション)していく変革のタイミングなのではないかと思います。