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Bay Area Startup News Web Designing 2019年12月号

オンラインから実店舗、開封体験まで演出 優れたCXでファンを魅了するD2Cブランド「Allbirds」

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

情報の透明性でインパクトを与えるD2Cブランド

多くの商品がAmazonなどの大型ECストアで販売される中で、自社のサイトや店舗でしか商品を販売しないタイプのブランドがアメリカで注目を集めています。これらは、「Direct to Consumer」の略であるD2Cと呼ばれ、製造から販売までを自社で一貫して行うことで仲介業者を減らし、より手頃な価格で品質の良いもの、ニーズにあったものを消費者に届けているブランドです。 

D2Cブランドの特徴の1つが情報の透明性で、素材や製造過程、販売チャンネルなど、すべてのプロセスをユーザーに見せることで、より社会に対して良いインパクトを与えています。その根底にあるのがスタートアップの精神で、多くのD2Cブランドがスタートアップ企業として認識されています。

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Allbirds
製造から販売まで一貫して行い、消費者への直接的なアプローチをするD2C(Direct to Consumer)ブランドで、「環境に優しい靴」をコンセプトに商品の設計・販売を行なっています

 

“世界一快適なシューズ”Allbirdsの顧客体験

そのD2Cの代表的企業の1つが、履き心地の良いスニーカーを提供するAllbirdsです。米Time誌によって「世界一快適なシューズ」とも評されたAllbirdsは、アメリカ西海岸を中心に著名起業家やセレブの間でも高い人気を誇っています。 

2016年に創業したこのブランドは、当初1種類のみの商品で展開し、2年間で100万足販売、2億ドルを売り上げ注目を浴びました。

Allbirdsのシューズがここまで人気になった秘訣の1つが、こだわった素材。ニュージーランドのメリノ・ウールを利用することで、最高の履き心地と軽さを実現しています。その柔らかさは素足で履く事で実感することができます。また、2019年にリリースされた ”Tree”シリーズは、天然の木材繊維を素材にすることで通気性と消臭効果を実現しています。 

商品ラインアップも卓越で、男性用、女性用それぞれにわかりやすいジャンルとスタイルを揃え、定番色と限定色を提供。限定色の在庫数はかなり少なく、毎月新しいカラーが追加されるため、毎月購入するファンも増えています。

オンラインで購入した商品のユーザーに対しての最初のタッチポイントである、開封体験も上手に演出されています。Allbirdsが使用している配送用の箱は、配送の役目を終えたらシューズボックスとして使えるようなデザインとなっています。かさばるシューズボックスをさらに大きな配送用の箱に詰めるのではなく、シューズボックスそのものを配送用にしてしまうという発想の転換をすることで、新鮮な顧客体験をユーザーに届けています。  

 

配送用の箱からブランディングが始まっている

その配送用の箱を開けると、内側にまず「WE ARE ALLBIRDS」という自己紹介が記載されています。そして、配送中に箱の中でシューズが動き回らないよう固定する仕切りには、ブランドのバリューを記載。さらに、シューズの中からは、かわいい顔つきのシューズキーパーが出てきて、そこにも商品の特徴が書いてあるのです。少しのスペースも無駄にすることなく、上手にブランディングを行っています。 

加えて、この箱はリサイクルダンボールと大豆ベースのインクが使われており、100%リサイクル可能。パッケージそのものから自然に優しいAllbirdsのブランドのコンセプトを体現するものとなっています。 

この開封体験は、D2Cブランドにとってとても重要な役割を果たしています。購入者に対してブランドのメッセージを体験を通じて届けるだけではなく、思わずシェアしたくなるような開封体験の提供をすることで、SNSなどを通じてより多くのユーザーにそのブランドの存在を知らせることに一役買っているのです。 

 

オンライン・開封体験・実店舗で総合的にCX向上

Allbirdsは、創業当初はオンラインのみでの販売でしたが、現在ではサンフランシスコの本店を含め、ニューヨーク、ロンドンなど、合計8つの実店舗を展開するまでになりました。この実店舗もしっかりと考えられており、オンラインストアの手軽さと居心地よさを再現することで、週末には行列のできるお店になっています。

例えば、店舗に入ると壁にスニーカーが木の実のようにディスプレイされ、その場で簡単に試着することができます。購入者には無料で異なるカラーの靴紐もプレゼントしたりもしています。

オンライン販売から始め、サイトの体験とコンテンツにこだわり、発送された商品の開封体験などを通じてブランド認知を高め、店舗での体験によって総合的に上質な顧客体験を届けるAllbirdsのCX戦略は、多くのD2Cブランドにとってのお手本になっています。

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まずは商品ラインアップをシンプルに、わかりやすく展開。商品の選定や購入も一画面ででき、わからないことはサイト隅にある「Live Chat」で手軽に相談できるようになっています
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現在では世界で8店を構える実店舗では、商品自体の魅力は当然として店にいることの居心地良さと、オンラインのような購入の手軽さを再現することを意識してつくられており、行列ができるほどになっています。写真はサンフランシスコ店
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購入後、自宅に届く配送用の箱は、Allbirdsのブランディングのアイデアが詰まっています。箱を開けた時からちょっとしたサプライズとともに同社の想いがビジュアル化され、コンセプトの訴求とともにSNS拡散などでブランド認知拡大にも役に立っています
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Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2019年12月号

Web Designing 2019年12月号

2019年10月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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真の「顧客の顔」がわかれば失敗しない!

Webビジネスの顧客体験(CX)改善テクニック


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最近、Webビジネス界隈では「顧客体験(CX)の重要性」がよく話題に挙がるようになってきました。

「お客様一人ひとりにあった情報やサービスを提供し、顧客満足度をあげる」




この顧客体験は企業の経営層だけの話ではなく、企業の課題を解決するパートナーである制作会社をはじめ、すべてのWebやアプリ制作者、ディレクター、プロデューサーが考えなければいけないものになっています。

とはいえ、顧客体験の提供? 個人単位で接客? どうやってやればいいの? 高価なツールが必要なんでしょ? と考えてしまう企業のWeb担当者もいれば、「ウチはWebサイト制作が生業だから関係ないでしょ」と思う制作サイドの方もいるかもしれません。

いえいえ、今やすべてのビジネスでWebやアプリなど「デジタルの顧客接点」なしでは成り立たない状況の中、その接点が顧客体験向上にはなくてはならない重要な役割になっているのです。

本特集では、顧客体験(CX)が注目される背景から紐解き、実務で実現させるために必要な考え方・進め方をステップバイステップで丁寧に解説します。

本特集を読めば、すべての作業でCXを頭に置いて取り組めるようになるはずです!




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