ネットで話題のiPhone批判CMにAppleファンとしてツッコむ|MacFan

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米Samsung「Ingenius」CMは許されるの?

ネットで話題のiPhone批判CMにAppleファンとしてツッコむ

文●氷川りそな

Mac Fan独自の視点で、アップル周辺の最新ニュースや話題に切り込む!

良いものが欲しいと思うのは人の常だが、それは客観的な評価に基づかなければ意味はない。Samsungが展開する新CM「Ingenius」シリーズを見たときに、筆者はそれを痛感した。その映像に含まれているのは、すべてが真実なのだろうか。あえてこのCMの内容にツッコミを入れてみることにした。

 

“ツッコミ”の連続

自分たちの作っている製品は素晴らしい、他社のものよりもきっと優れていて魅力的なものだー自社製品に対してそんな思いを持つことは極めて自然であり、だからこそ自信を持って人に勧められるはずだ。

だが、だからといって他社製品を露骨に貶めてまで自社製品の優位性をアピールするのはいかがなものだろうか。米サムスンが公開しているCM「インジーニアス(Ingenius)」シリーズを見て、筆者もそう感じてしまった。

「筆者も」と書いたのには訳がある。このCMは公開されるや否や、その内容に関してインターネット上で大きな波紋を呼んだからだ。現在このCMは7本公開されているが、すべて人々がアップルストアらしき建物に赴き、「ギャラクシーS9(Galaxy S9)ならできるのに、iPhoneではできないこと」に不満を漏らすという、いわばアップル批判、iPhoneをディスる内容になっている。とりわけアメリカにおいてはこうした比較広告は決して珍しいものではなく、広告戦略の1つの手法としても使われている。文化の違いと言われてしまえばその通りなのだが、日本人としてCMを見ていると、ネットの人々の反応と同じようになんだか釈然としない気持ちになってしまった。特に、アップルをよく知るファンであればなおさらで、CMで描かれている内容についついツッコミを入れてしまいたくなるのだ。

たとえば「急速充電(Fast Charger)」編ではユーザ(アップルストアに来店する客)はiPhoneに急速充電器が付属していないことに不満を漏らす。対応するアップルロゴ入りのTシャツを着たスタッフは「USBタイプCアダプタと対応するライトニングケーブルを買えば…」としどろもどろに返答する。つまり、急速充電器が付属するギャラクシーS9の優位性を示しているのだが、実際はギャラクシーS9も日本向けモデルなど国によっては電源アダプタを同梱していない地域があるし、そもそも急速充電器の必要性も納得のいく形で示されていないではないか。

続いて「ドングル(Dongle)」編はiPhoneから3.5ミリのオーディオ出力端子が廃止されたことで、有線のヘッドフォンを使うにはドングル(変換アダプタ)が必要だとスタッフに説明されて、「なぜそんなものが必要なのか」とユーザが非難する場面が描かれている。これはiPhone 7が出た当時にも話題なった話だが、今となってはエアポッズ(AirPods)のヒットに見られるように、ほどんどのオーディオメーカーがワイヤレスヘッドフォンに主力製品をシフトしている。世の中の大多数のニーズがすでにワイヤレスに移っていることを考えれば、時代遅れの批判ではないだろうか。

 

ミスリードを誘発

こうしたおかしな指摘は「ノッチ(Notch)」編にもある。iPhone Xはディスプレイサイズを広げるために上部のフェイスタイム(FaceTime)カメラを切り欠くように配置したデザインを採用している。CMでは「フルスクリーンで映画を見ると映像の一部が隠れるのでは?」というユーザの質問に対し、スタッフが「そのうち慣れる」という雑な対応して誤魔化す。だが 実際には、iPhone Xで全画面表示にした際に映像の一部が隠れないのは周知の事実で、むしろフルスクリーンした場合にはギャラクシーS9でも映像の上下部分が隠れてしまうという事実は語られていない。

「マルチタスク(Multitasking)」編でユーザは「ギャラクシーでは2画面表示ができるのに、iPhoneではできないの?」と詰め寄っているが、その機能がスマートフォンに搭載されていることのメリットの説明はない。アップルはiPadシリーズで2画面表示をできるようにしている一方で、iPhoneには「あえて」採用していないのだ。

また、スペック面でミスリード(誤解)を誘発させているものもある。「カメラ(Camera)」編では、カメラの評価スコアがギャラクシーのほうが高いことを自慢しているが、基準となった「DxOマーク(DxOMark)」で調べてみると、スコアは99と97で、その差は僅差。しかもDxOマークは、センサの特性のみを測るテストであって、撮った写真の美しさを比較する目的で作られたものではない。これはDxOマークの公式サイトにも注意書きされている。せめてスコア109を叩き出したことで話題になったファーウェイ(Huawei)の「P20プロ(P20 Pro)」くらいのクオリティであればいいのだが…。

筆者が一番不思議に思ったのは、「スピード(Speed)」編だ。ユーザは「iPhone XのダウンロードスピードはギャラクシーS9より速くないんでしょう?」とスタッフを困らせているが、ダウンロードスピードは環境に依存する部分が強く、理論上最速である意味はほとんどない。そもそも単純なハードウェア性能で比較するのであれば、ベンチマークテストではiPhoneのほうがマルチコアで1・25倍、シングルコアでは2倍以上の性能を叩き出しており、むしろこっちのほうはどうなんだと聞きたくなってしまう。

「容量(Storage)」編では、ユーザはマイクロSDカードを入れるスロットがなく、本体の容量が少なくなったときに拡張する方法がないことを嘆く。確かにクラウドにデータを置くことに抵抗がある人がいるのは事実だが、SDカードに入れたデータは初期設定では暗号化されていないため、抜き取られると第三者に簡単に読み取られてしまう。設定で変更可能だが、果たして何割の人が暗号化しているのだろうか。




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