メモリの仕組み・役割を知ろう|MacFan

特集

いったい何のためにあるの?

メモリの仕組み・役割を知ろう

文●栗原亮中村朝美吉田雷(MixtureScape)イラスト●大野文彰

数年前まで16GBや32GBといえばiPhoneのストレージ容量でしたが、それだけの大きなメモリが最近のMacには搭載可能です。そのせいかメモリとフラッシュメモリを混同するユーザも続出。まずは、あらためてメモリとは何なのかおさらいしておきましょう。

メモリが速度に影響する

本特集のテーマであるメモリですが、まず誤解のないように説明すると、ここでいうメモリとは、メインメモリ(揮発性メモリ)のことで、フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)とは異なります。

メインメモリとフラッシュメモリは、速度と価格がまさに桁違いです。メインメモリは毎秒17GBで1GBあたり約1250円にもなりますが、フラッシュメモリが毎秒2~3000MBで1GBあたり約25円です。

このメインメモリは、Macを構成するハードウェアでCPUの次に重要なコンポーネントです。ソフトはもちろんmacOSなどのオペレーティングシステムも、このメインメモリとプロセッサが情報をやりとりして動作しています。

そのため、このメインメモリがMac全体のパフォーマンスを左右します。macOSではメインメモリをリアルタイムに管理しており、仮に少ない容量しかMacに搭載されていなくても多くのソフトを動かしファイルを開くことができますが、メインメモリが足りないときは速度が犠牲になります。

そんなメインメモリに関して、「容量は多いほうが良い」「容量が不足するとMacが遅くなる…」などといった知識はあるものの、正しく理由を説明できる人はどれくらいいるでしょうか。

そこで、ここではメモリの仕組みや使われ方、メモリ不足でMacが遅くなる理由などを解説していきましょう。

 

 

[Study 1]混同されがちなメインメモリとフラッシュメモリ

「(客)メモリ8GBのiPhoneください」「(携帯ショップ店員)お客様、現在のiPhoneは32GBからとなっています」という、コントようなやりとりがSNSに投稿され話題となりました。客はメインメモリのことを言っていますが、店員はフラッシュメモリ(ストレージ)と勘違いしているからです(現在8GBのメモリを搭載したiPhoneはありません)。同じような誤解をしているMacユーザも意外と多く、初心者と話が噛み合わなかった経験のある読者もいるのではないでしょうか。

Macに限らずコンピュータに使われているメインメモリとフラッシュメモリには、大きな違いがあります。まずフラッシュメモリは不揮発性メモリ(NVM=Non Volatile Memory)であり、電源の供給を止めてもデータを保持することが可能。ハードディスクなどのストレージの代わりに「SSD(Solid State Drive)」として利用されるほか、もちろんiPhoneのストレージにも採用されています。読み込み、書き込みともに高速で、特に電気を使って削除が「パッ」っとカメラのフラッシュのように行えることから、フラッシュ(Flash)メモリと呼ばれます。

一方、メインメモリにはRAM(Randam Access Memory)という揮発性メモリが使われており、電源の供給を止めるとデータが消えてしまいます。その代わりに非常に高速なため、CPUとデータとプログラムのやりとりに使われています。このRAMの速度は、SSDとの比較で7~30倍も高速であり、まさに桁違いなのです。しかし、そのぶんとても高価なので標準構成のMacでは8~16GBしか搭載されていません。

 

●メモリモジュール

もともとメインメモリはRAMチップが8~16個実装されたDIMMとよばれるモジュール単位でコンピュータに搭載されていました。これを交換したり増設したりして容量を増やせたのですが、最近のMacではスペース節約のためロジックボードに直接実装されることが多いです。 写真●iFixit.com

 

●SSDモジュール

フラッシュメモリは、HDDを置き換えられるようにした箱型のケースに入ったものや、一見メモリモジュールのような細長いものもの、チップがロジックボードに直付けされている場合もあり、形状の自由度が高い反面、交換するのは難しくなっています。 写真●iFixit.com

 

 

[Study 2]メモリはトランジスタとコンデンサで構成される

メモリはどのような構造になっているのでしょうか。ここでは、メモリの中でもコンピュータのメインメモリに使われているDRAM(Dynamic Random Access Memory)の構造を解説します。

まず、コンデンサ(キャパシタ)と呼ばれる電荷(電気を帯びている量)を貯められる素子と、これを制御するトランジスタと対になったものをメモリセルと呼びます。このコンデンサに電荷が溜まっている状態が「1」、溜まっていない状態が「0」として、1ビットの情報を記憶できます。メモリセルは格子状にたくさん並べられ、それぞれが縦横に配線されていますから、任意かつ複数のセルの電荷を調べ、0か1かのビット情報を確認してデータとして利用しています。

DRAMは、電源のある状態ではデータが保持されると言われますが、実はコンデンサに蓄えている電荷は、時間の経過とともに少しずつ失われてしまい、そのままにしていると電荷のない状態、すなわち「0」との判別がつかなくなってしまいます。電源がなくなるとメモリセルに保持された電荷が次第に消失し、データが消えてしまうのはこのためです。そこで、1秒間に数回リフレッシュという作業で電荷を補っています。

メインメモリとして使われるDRAMは多くの場合、DIMMやSO-DIMMというメモリモジュール単位で搭載されています。ただし、ノート型のMacのメインメモリは、ロジックボードに直付けされており、4個ないしは8個単位のDRAMチップが実装されています。

 

●メモリの構造

メモリは格子状に並んだメモリセルに電荷を貯めることで「1」を、電荷がない状態を「0」としてデータを保存していて、電源がなくなると、電荷も消失します。

 

●直接実装がトレンド

2018年モデルの13インチMacBook Proのロジックボードです。赤い枠内が16GビットのDRAMチップで、4個搭載することで8GBの容量になっています。 写真●iFixit.com