欲しいのは“I need”なガジェット|MacFan

アラカルト フツウを変える、フツウをつくる

欲しいのは“I need”なガジェット

文●三橋ゆか里

米国LA在住のITライター・三橋ゆか里氏の最新テックトレンドウォッチ!

モノより体験の時代と言われて久しいですが、ミニマリズム(最小限のモノで豊かに暮らすこと)のトレンドにも影響されて、新しくモノを買うときは本当に必要なものだけにとどめるようになりました。特に慎重なのが、ガジェット類の購入です。

皮肉なことに、2017年に購入したモノがその原因。昨年買った製品には、スマートボトル「ハイドレート・スパーク(Hydrate Spark)」、耳栓型基礎体温計「ヨーノ(Yono)」、スマートジュエリー「リングリー(Ringly)」などがあります。

リングリーは、設定した相手からメッセージや電話があるとバイブレートし、特定の色で光って知らせてくれる指輪型通知デバイスです。わたしの場合、愛用しているフィットネストラッカー「フィットビット(Fitbit)」に同じ機能があるため利便性を感じず。ハイドレート・スパークとヨーノは、機能したりしなかったり気分屋さんで、使い続けることに逆にストレスを感じてしまいました。

ハイドレート・スパークは、平面に置いたボトルを水で一杯にすることで、飲んで減った分量を計るもの。結果は、連携のスマホアプリで一目でわかるはずなのですが、お水をゴクゴク飲んでも認識してくれないことがしばしば。ヨーノは、就寝中に耳栓として使える基礎体温計の進化版です。一般的な基礎体温計は朝起きたタイミングで一度だけ測りますが、ヨーノは就寝中、基礎体温を終始測ることで正確性が増すのだそう。連携アプリのデザインもいまいちでしたが、大きめサイズの耳栓のフィット感が悪く、痛くて一晩つけて眠れませんでした。

WEBやアプリなら初期段階の多少のバグにも目をつぶれますが、デバイスの場合、基礎的な機能が安定していないと元も子もありません。上記の商品の場合、それぞれ水分量と基礎体温のデータを把握し、それを解析することで生活改善に役立てることを想定していたのですが、そこにたどり着く前につまづく始末。商品のクラウドファンディングや公式サイトで紹介されている使用例は、あくまでベストケースシナリオなんだということを思い知りました。

どんな些細なアイデアでも、その需要を検証し、初期の製品開発に必要な資金が得られるクラウドファンディング。素晴らしい側面がある一方で、ガジェットづくりのハードルの低さによって“ガラクタ商品” が生まれやすいのもまた事実。でも、そもそも「待ってました!」と心を踊らせてくれるようなガジェットがないのはクラウドファンディングに限った話ではないかもしれませんが…。

そんな中、これは使ってみたいと思えるガジェットが株式会社チカクの「まごチャンネル」です。家を模倣した白い小型デバイスを自宅のテレビに接続させることで、遠隔にいる家族にスマホで撮った写真や動画を見せることができます。製品名が物語るように、主には離れて住んでいる祖父母に孫の様子を伝える目的で開発されました。

先日も、甥っ子に頼むはずだった「まごチャンネル」のセットアップを自分でさくっとやってしまったという友人のお母さまの話を聞いて、ターゲット層のITリテラシーレベルに合わせて開発されていることを再確認しました。まごチャンネルの1番のポイントは、現代人が抱える人間関係の“困りごと”の解決に取り組んでいること。大勢が抱えているであろう「遠隔地にいる家族とのコミュニケーション」の改善を後押ししてくれるのです。

今後、まごチャンネルのように、ガジェット好きアーリーアダプターの “I want” にとどまらず、より広い層にとっての“I need”な商品が生まれることを願うばかりです。

 

 

 

 

Yukari Mitsuhashi

米国LA在住のライター。ITベンチャーを経て2010年に独立し、国内外のIT企業を取材する。ニューズウィーク日本版やIT系メディアなどで執筆。映画「ソーシャル・ネットワーク」の字幕監修にも携わる。【URL】http://www.techdoll.jp




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