2018.02.08
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iOS 11で導入された新しいフレームワーク「ARKit」によって、ARが再び脚光を浴びている。そのARの基幹技術の1つであるSLAMを独自開発するKudan株式会社の千葉悟史さんにARの現在と未来への可能性について聞いた。
現実世界に3Dオブジェクトを配置し、誰のどのデバイスからも参照できる「ARクラウド」が注目を集めている。その発想自体は目新しいものではないが、近年モバイルデバイスに高度なAR機能が標準搭載されていることで、普及にはずみがついた。そして、それをさらにもう一歩先に進めるためのテクノロジーがSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:空間認識技術)だ。
ARキットの課題とは
AR(拡張現実)のフレームワークであるアップルの「ARキット(ARKit)」やグーグルの「ARコア(ARCore)」の登場で、同分野に注目が集まっている。背景にあるのは、特別なハードウェアを追加しなくても、スマートフォンのOS標準機能だけで、さまざまなARコンテンツを手軽に利用できる環境が整ったという事実だ。たとえば、2017年12月にはARとGPSの機能を利用したアプリ「ポケモンGO」がARキットへの対応を果たし、出現したモンスターに近づいたり、その後ろに回りこめるようになったりするなど、その「リアリティ」の高さに驚かされたという人も多いのではないだろうか。
「ARの可能性はこの程度ではありません。何が現実で何がバーチャルなのかわからない世界が近い将来に実現します。アップルのARキットはよく考えられた機能ですが、まだまだ改善の余地があります」と語るのは、英国・ブリストルと日本を拠点に独自の空間認識技術「クダンSLAM(KudanSLAM)」を開発するKudan株式会社の千葉悟史さんだ。
そもそも、なぜARキットを利用したアプリではiPhoneの画面に出現した3Dオブジェクトを適切な位置に表示でき、自分が動いてもオブジェクトの位置が追随するのだろうか。
千葉さんによると、ARキットではカメラからの画像を用いて隙間のある空間の特徴点を捉えて「床面」として認識し、それ以降の位置推定は傾きセンサや加速度センサなど「IMU(慣性計測ユニット)」を用いてトラッキングを行っているのではないかとのこと。この方法は初期位置が異なる複数の人が同じARを共有することはできない。加えて、トラッキング精度の向上にも限界があると、千葉さんは見ている。
こうした現在のIMUベースの自己位置推定と制御の仕組みをより高度なものに置き換え、あるいは補完していくものと目されているのが「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」と呼ばれる空間認識技術だ。
SLAMにおいて世界トップレベルの技術を持ち、積極的に商用化を推進しているのが、大野智弘氏が2011年に英国・ブリストルで創業し、2014年より日本との両拠点でグローバルの事業展開を行っているKudan株式会社だ。社名のKudanは、時代の変革時に出現する日本の妖怪「件(くだん)」に由来している。【URL】https://japan.kudan.eu