2017.11.30
企業や教育機関へのアップル製品の導入をサポートする、株式会社Tooの福田弘徳氏が「モビリティ」の地平を語る。
仕事で使うMacはクリエイティブの現場や専門性の高い仕事、医療機関など、特定領域での導入がほとんどであった。しかし、企業内でMacを採用する話題が最近盛り上がっている。Mac導入によってTCOを削減したIBMの事例をきっかけに、日本企業でも社員の利用するPCの1つにMacも加えようという流れである。
これは一般的にCYOD(Choose Your Own Device)と呼ばれる導入方式で、社員が利用するPCについて選択プログラムを導入するということである。先月開催されたアップルデバイスの管理ソリューションを提供するJamf社のユーザカンファレンスでも、このIBMの事例に倣い、SAPやキャピタルワン、ウォルマートがMacの利用について選択プログラムの導入を始めていると発表された。
選択プログラムの導入効果は、IBMの事例にあるように、Macを導入するほうがウィンドウズPCを利用し続ける場合と比較してもトータルコストが安い、といったものだけではない。たとえば、社員が「選択できる」ということは、より仕事にフォーカスできる環境が整い、生産性が向上することにつながる。人事部や採用担当者にとっては有能な人材を惹きつけ、定着させるために選択プログラムが有用となる場合もあるだろう。さらに、企業が多様性を認めることは、社員一人一人がゴールに向かって取り組むことについて、企業が全面的にサポートしていることの意思表示も兼ねており、企業文化自体を変化させる可能性も秘めているのだ。
ただし、単に導入すれば効果が自然に生まれるものではない。
選択プログラムの採用について、最初に考えなければならないことがある。それは、「Why?」(なぜ選択プログラムを導入するのか、Macを使いたいのかを考えること)だ。ハードウェアのスペックや使用するアプリケーション、互換性、セキュリティ、サポートなどIT機器の導入検討には考えなければならない要件が膨大にあるが、後々そういった要件の渦に飲み込まれないためにWhy?から考え始めることが何よりも大事である。そして、そのためには、まず目的と目標が必要となる。目的は「Macを導入してどんなカルチャーを作り、社員にどうあって欲しいか?」。目標は、「いつまでに××を成し遂げる、到達するか」である。このWhy?から始めるアプローチは、どんなプロジェクトやタスクを進めるうえでも大事なことである。