2016.10.12
アップルペイはなぜこの段階で日本に上陸でき、また実現の裏側には何があったのでしょうか? 日本における電子決済の仕組みに詳しい、情報セキュリティとIT分野のコンサルティング会社・fjコンサルティング株式会社CEOの瀬田陽介氏に話を聞きました。
日本独自の仕組みでスタート
日本国内でアップルペイがスタートするにあたり、フェリカ搭載というハード面だけでなく、アップルペイの仕組みも日本独自の仕様となるようです。「日本のアップルペイは、クレジットカードには直接対応せず、クイックペイ、iD経由で決済するという異例の方式です」と、fjコンサルティングの瀬田陽介氏は言います。
たとえば、JCBのクレジットカードをアップルペイに登録したとしましょう。すると、そこにはクイックペイの機能が付加されます(別途手続きが必要な可能性もあります)。iPhoneをかざすとクイックペイで決済され、その代金がJCBカードに請求されるという仕組みです。
なぜ、このような複雑な方式にしたのでしょうか。「アップルペイはNFCタイプ A/Bという規格を使って、加盟店の決済端末と通信します。しかし、日本で普及している決済端末は、このタイプA/Bとは別規格のフェリカに対応したものがほとんどなのです」。日本独自のフェリカにアップルペイを対応させるため、既存の電子マネーであるクイックペイやiDの仕組みを利用した、ということのようです。
このフェリカ対応は、決済端末の普及規模だけの問題ではありません。「フェリカ対応したことにより、カード会社がアップルペイに参加することを強力に促すことができました」。
カード会社にとって、アップルペイに参入するとき、アップルへの支払い手数料(米国では決済金額の0・15%)は重い負担となります。カード会社の主な収入源であるカード手数料は、現在3%台前半が相場になりつつあります。この手数料は、時代が下るにつれて圧縮されてきたもので、さらにそこからアップルに0・15%を支払うのは決して小さくない負担。これがアップルペイ参加への大きな障壁となっていたのです。