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校内無線LAN工事も生徒自身で!工業高校のiPad Pro活用

文●神谷加代

2016年4月から新設された「理数工学科」においてiPadプロのBYODを実施した千葉県立千葉工業高校。他学科においても、それ以前に共用のiPadエア導入をスタートさせるなど、着々とICT化を進めている。その環境構築においては、技術やツールに多く触れる工業高校ならではの珍しい取り組みも行われていた。

 

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2016年に創立80周年を迎えた千葉県立千葉工業高校(千葉市中央区)。2015年に文科省から、高度な知識や技能を身につけ、社会の第一線で活躍できる人材育成を目指すスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)の研究指定校に選ばれた。

 

 

“技術”を扱う高校として

公立の工業高校がiPadプロをBYODで導入とは、ちょっと意外な組み合わせだと感じる方もいるだろう。実施したのは、千葉県立千葉工業高校(以下、千葉工業)の理数工学科だ。同校は昨年まで、全日制は工業化学科・電子機械科・電気科・情報技術科の4科だったが、2016年4月から工学系の大学進学を目指す「理数工学科」を新たに設置した。千葉工業では近年、就職希望者に加えて、大学や専門学校など進学希望者の割合が増えていることが、その背景にある。

新設された理数工学科では、学科のスタートと同時に全新入生40名が9.7インチのiPadプロを自費で購入、授業科目での学習に活用するBYODを実施した。千葉工業の鈴木賢二校長はiPad導入について、次のように語る。

「工業高校での学習は、先端技術を取り扱うものでなければなりません。ならば学習において使うツールも最先端のものを取り入れるべきと考え、導入に踏み切りました」

 

 

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千葉工業高校、鈴木賢二校長。iPadを活用した魅力的な学校づくりを目指す。

 

 

今回のiPadプロ導入が本格実施されるまでには、約2年の月日がかかっている。千葉工業では2014年からiPad導入の検討を開始。教師用にiPadミニ2を8台導入して試験的な運用を始めた。当時はまだ校内無線LANが整備されていない状態であったが、P2P接続でiPadの画面を黒板に映写できるよう、プロジェクタやアップルTV、マグネットスクリーンを同時に用意した。板書の映写や資料提示など、まずはiPadミニを使って“見せる”ことができる授業に取り組んだのだ。その後、生徒たちの共用タブレットとしてiPadエア2を42台導入。また創立80周年記念事業の一環で、1、2年生の教室にプロジェクタタイプの電子黒板とアップルTVを設置するなど、ICT環境を整備した。

理数工学科がiPadプロを選んだ理由は何か。同科のiPad導入を陣頭指揮した片岡伸一教諭は、性能の良さと容量32GBモデルの価格設定がポイントになったと指摘する。もともと準備段階ではiPadエア2の64GBを検討していたこともあり、iPadプロの32GBは金額的にも大差がないと判断した。加えて、マルチタスクと画面分割が可能なスピリットビューを活用するための、CPU能力が決め手となった。Wi-Fi/セルラーモデルの通信方式については、生徒が家庭と相談しながら好きなものを選んでいるという。

生徒が主体的に関わる

iPadプロが導入されてまだ数カ月ではあるが、同校の理数工学科では、どのようにiPadプロを活用しているのだろうか。

取材をした1年生の授業では、「先生にiPadの使い方を逆提案しよう」というテーマで協働学習に取り組んでいた。この授業は、生徒がグループに分かれて、①授業で使えるおすすめのアプリ、②役立つ動画コンテンツ、③学習に使えるiPadの機能の3つの項目について調べ発表し合うというもの。こうした活動をとおして、それまでスマホでゲームや動画視聴ばかりしていた生徒たちに、“学習用途”としてiPadが活用できる気づきを与えることが狙いだ。 

「工業高校では数多くの道具を使います。ただし、場合によっては危険な使い方もできてしまう。iPadが目的に応じて正しく使えるように意識を高めるため、このような授業を行っています。使用に際してのルールなども、生徒たちと一緒に作っていきたいですね」(片岡教諭)

授業で使う資料は、事前にオフィス365エデュケーション(Office 365 Education 以下オフィス365)のクラウドストレージ「ワンドライブ(OneDrive)」で配付。生徒たちは、調べた内容などを同じくオフィス365のデジタルノート「ワンノート(OneNote)」に記入する。教師用のアカウントからはそれらをリアルタイムで確認できる。

千葉工業では、すべての教員と生徒がオフィス365のアカウントを持っており、1TBのクラウド保存領域を無料で使用できる。課題の提出やPDFファイルによる連絡事項の伝達など、オフィス365がメインに活用されているのが同校におけるiPad活用の特徴だ。

社会科を受け持つ岩﨑匡高教諭は、生徒が1人1台iPadを持っている環境を活かし、反転授業にも取り組んでいる。具体的には、世界史の動画を見る宿題を出し、生徒は気づいたことや調べたことをワンノートの共有ノートブックに書き込む。iPadを使い始めた頃は、生徒が世界史に興味を持てるよう、インパクトのある教材を黒板に映すことを考えていたが、実践を重ねるにつれて、1人1台iPadがいつでも使える環境の凄みに気づいたという。

「生徒同士が互いの意見や情報を共有しやすいことが1人1台のメリットです。このまま取り組みを進めていけば、より質の高いアクティブラーニングに挑戦できるはずです」(岩崎教諭)

また、工業高校ならではの実習や実験科目でも、iPadは活用されている。生徒たちは実験結果や実習内容をまとめたデジタルレポートを作る機会が頻繁にあり、言葉で伝えにくい色の変化や事象について、写真や動画を使って効果的に使いレポートを作成しているという。

 

 

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電気科の片岡伸一教諭(右)と社会科を担当する岩﨑匡高教諭(左)。両氏とも同校ICT推進委員会のメンバー。生徒のiPadプロ購入に際し、その購入方法や保険の情報、通信方式の違いによるコストの差額など、細かなマニュアルを事前に作成した。

 

 

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「先生にiPadの使い方を逆提案しよう」というテーマの協働学習に取り組む生徒たち。グループ内でリサーチする項目を分担し、班長がまとめてリサーチ結果を報告する。オフィス365で、先生とリアルタイムに進捗状況を共有できる。

 

 

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電子回路について学ぶ授業では、デジタルレポート作成用に基板をiPadで撮影。また、回路を作り込む段階で変更前の様子を撮影し記録しておけば、変更後も写真を頼りに元に戻せるようになるというメリットも。

 

 

自分たちで行う配線工事

今回の理数工学科新設に先立ち、千葉工業では2015年に校内無線LANの敷設に着手した。なんと、この工事を担当したのは同校電気科のコンピュータ技術研究部の生徒たちだ。工事を行うには、「工事担任者DD3種」という国家資格が必要だが、部員の中には、すでにこの資格を取得していた生徒がおり、その生徒の立ち合いのもと工事が進められた。

工事自体は、工業高校さながらというべき、プロが使用する機材と同じものを使って作業が進められた。アクセスポイントを設置したり、天井を開けて、コンクリートに配線を通したりと、現役の高校生が自分たちの学校のために無線LAN環境を整備する。作業ができる時間も限られていたというが、2015年9月から進めてきた敷設工事は、iPadプロを使用する理数工学科の校舎に関してほぼ完成しているという。他校舎にも同じ環境を作るべく、現在作業を進行中だ。

敷設工事に加わった海老沼萌さんは、「最初に先生から話があったときには大変そうだと思ったが、自分たちの学校でiPadが使えるようになるといいなと思い作業に加わった」と語る。田嶋拳士さんや皆森浩奈さんも「面白そうだと思った。普段できないことが経験できると思った」と話しており、楽しんで工事に参加した気持ちが伝わってきた。

将来は、「大学に進学して、都市建築の勉強がしたい」「学校で学んだ技術が生かせる仕事につきたい」と語る生徒たち。高校生から工学、技術にたくさん触れる生徒たちが、今後、iPadプロをどのように活用していくのか楽しみだ。

 

 

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校内LANの配線工事を行った電気科のコンピュータ技術研究部の皆森浩奈さん(左)、海老沼萌さん(中央)、田嶋拳士さん(右)。

 

 

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コンピュータ技術クラブの生徒が、校内LANの配線工事を行っている様子。アクセスポイントを設置し、天井を開けて配線を通す本格的な工事を行った。正しく配線がつながったかを示すパイロットランプが点滅したときには、大きな歓声が上がったという。

 

 

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