第38話 未来に立ちこめる暗雲|MacFan

アラカルト FUTURE IN THE MAKING

第38話 未来に立ちこめる暗雲

文●林信行

aka Nobiさんこと、林信行氏。IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントが物申します。

青天の霹靂とはまさにこのこと。東日本大震災から5年が過ぎ、この連載では違う話題に触れようと思っていた矢先に熊本地震が起こった。東日本大震災のときには、自分でも揺れを感じてしばらくMacに張り付いていたが、今回はミラノに出張中だった。しかも、インターネット接続がほとんどないに等しい状態。おまけに、ミラノ直後にはラスベガス、ニューヨークの出張が続いた。海外にいても「ヤフー!防災」のアプリが度重なる余震を知らせてくれるものの、それだけではうかがい知ることができず、ただただ日々の仕事を続けながら心配をするばかりだ。

21世紀の人類は科学技術を発展させ、宇宙の謎もかなり解明し、生物の遺伝子を自由に書き換え始め、自らをも脅かしそうな能力を持つ人工知能やロボットまでもつくろうとしている。しかし、いくら頭ばかり賢くなっても、地球の表層がほんのちょっと伸び縮みしただけでこれだけ翻弄される存在でしかないのも、また事実だ。

そして、たった5年前の東日本大震災の教訓を活かせず、ソーシャルメディアでのデマをはじめ、再び5年前と同じ過ちの多くを繰り返している。環太平洋地域での地震活動が活発化しているという話もあるようだが、この分だと近くまた災害に見舞われても、再び同じ過ちを繰り返すだけなのかもしれない(自分だって偉そうなことはいえない)。

我々はスマートフォンも、パソコンもまだ普及していなかった時代と比べると一日あたり千倍以上もの情報にさらされている。何かの経験で得た情報も、映像として、文字の記録として外部記憶には残すものの、それらの多くは自分の血肉になっているわけではなく、あとから再び検索して探すような、さながらトランクルームに預けたような状態の少し疎遠な情報として所有しているだけに過ぎない。




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