OPPO Digital Japan河野さんを訪ねる|MacFan

アラカルト アップルのミカタ

高級オーディオの世界にITのカルチャーを吹き込む

OPPO Digital Japan河野さんを訪ねる

文●栗原亮

なぜ、アップルのミカタをするのか? アップル製品を手厚くサポートするハード&ソフトウェアメーカーの担当さんに、その理由を聞いてみた!

 

河野謙三(こうの・けんぞう)

OPPO Digital Japan株式会社代表取締役、株式会社エミライ代表取締役、ITコンサルタント。米大学在学中にシスコシステムズに勤務、帰国後はNTTコミュニケーションズや新生銀行を経て2011年にエミライを起業。社会人大学院でMBA取得、ビジネスコンサルティングや学生への講義、講演なども行う。趣味は自動車、カメラ、オーディオと多彩で愛車はポルシェ911。「(東日本)震災当時ユーラシア大陸を横断していて、帰国して大きな衝撃を受けました。次の就職先も決まっていたのですが、自分の経験やノウハウをいろんな会社に伝えたいと思って活動しています」。【URL】http://www.oppodigital.jp/

 

ここ数年、オーディオ愛好家から注目を集めているのが、高級ユニバーサルBDプレーヤなどを製造する米OPPO Digital(以下OPPO)だ。その日本総代理店で代表取締役を務めるのが、河野謙三さん。河野さんはネットワークエンジニアと金融のスペシャリストしての研鑽を積み、現在はITコンサルティング事業なども行っている。

「もともと2011年5月にエミライという会社を起ち上げていました。事業分類的には輸入商社になるのですが、海外の商品を日本に輸入するだけではなくて、アフターサービスやセールスのサポートもしています。いわば新規事業に対する投資会社という位置づけですね」

OPPO製品もその新規事業の1つとして取り扱っており、順調に業績を伸ばしてきたことから2013年1月にOPPO Digital Japanとして株式会社化した。

「OPPO製品はいちユーザとして愛用していました。私も、共同設立者の島(島幸太郎さん、同社ディレクター)もオーディオマニアですから、すごい製品がアメリカにあるぞということは知っていました。当時からの主力製品であったOPPOのユニバーサルBDプレーヤは価格が20万円代のハイエンド向けで市場としてはとてもニッチだったのですが、我々がまさにそのターゲットだったのです」

同BDプレーヤはその性能の高さから海外では人気を博していたが、日本では代理店がなかった。その理由として考えられるのは、東日本大震災後の景気低迷で高級機にリソースを割くのは各社がリスキーであると判断していたこと。加えてOPPO製品ならではの特徴も関係していた。

「OPPO製品は非常に多機能で高付加価値な製品です。実際に使ってみればそれほど難しくはないのですが、説明項目が多くて英語のマニュアルですら80ページを超えるものでした。これをわざわざ翻訳して、お客様からの問い合わせに対応するカスタマーサービスの体制を整えられる代理店というのも当時はほとんどなかったのです。ですが、それは逆にいえば市場として“ブルーオーシャン”なのですから、我々が参入することに決めました」

 

 

 

オーディオ機器としてOPPO製品はアップルデバイスとの親和性が高いことでも知られているが、ほかにも多くの共通性があると河野さんは語る。

「まず、製品本体のクオリティが高いこと。そして、外装のパッケージにまで丁寧にこだわっていることが挙げられます。また、ハードウェアの機能を最新に保つためにファームウェア・アップグレードで対応するという“ソフトウェア”志向なのもアップル的です。OPPOのCTO(最高技術責任者)は、私がそうであったようにIT畑の人間だったというのが大きく影響しているのだと思います」

ハードウェア性能重視の価値観が根強く残るオーディオ業界に、柔軟に機能を追加・更新できるIT業界の手法を持ち込んだOPPOは高級オーディオの“再発明”を果たしたイノベーティブなメーカーといえるだろう。

 

 

 

そのOPPOが高級ホームオーディオからパーソナル向けへと大きく舵を切った製品が据え置き型のDAC搭載ヘッドフォンアンプ「HA−1」とヘッドフォンの「PM−1」だ。これは同社のブランド認知を広めるうえでエポックメイキングな製品であった。

「なぜか、日本のオーディオだと単体コンポーネントのほうが性能が良いという価値観が広がっているのですが、OPPOでは1台買えば単機能の製品と同等か上回ることすらあります。たとえば、もしラジカセがコンポと同じ値段で同じ音だったら、便利なラジカセを使いますよね。OPPOの製品はオールインワンで高品質を実現しているので市場で受け入れられたのだと思います」

そして、さらに小型化を実現したポータブルDACが「HA−2」だ。こちらはiPhoneと一緒に持ち歩きながら高品質な音声を楽しめるというコンセプトの製品。

「これまでの製品と同様に、音にはこだわっていて自信があります。アメリカの開発チームも高級ヘッドフォンを普段使いしているオーディオマニアが多いんですよ。日本からも島が音作りなどの開発に携わっていて、日本で受け入れられやすい音の傾向や高級イヤフォンを愛好する日本市場の特性などを伝えています。その結果、どの国の人が聞いても“いい音だね”といえるポイントに近づけられました。そこには自信を持っています」

今後の展開については大きく2つの製品ストリームでそれぞれ新製品を出していきたいという。

「OPPOのコアコンピタンスであるBDプレーヤなどの4K UHD(超高解像度)製品と、HA−2のようなホームオーディオ製品。このいずれも新しい企画がありますので、期待していてください」

 

 

高性能を凝縮したポータブルDAC

OPPO Digital Japanで取り扱うDAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプ「HA-2」。コンパクトでスリムな筐体でありながら、DSD 11.2MHzという最新のハイレゾ音源に対応するなど高い実力を備える。本革を使用した外装などこれまでのDACのイメージとは異なる高級感がある。「アップルのMFi認証を備えており、iPhoneを充電しながらの再生も可能です」。

 

細部に宿るこだわり

HA-2は機能が豊富なだけでなく、細部の仕上げに至るまでこだわりが感じられる。「ボディはアルミ削り出し、ボリュームノブのトルクに至るまで調整しました」。日本語版のマニュアル作成も外注は行わずに、河野さんとディレクターの島さんの共同作業で行った。

 

据え置き型のDACもある

「HA-1」はUSB DACを内蔵したオールインワンのヘッドフォンアンプ。iOSデバイスの外部DACとしても利用可能だ。「多機能であっても単体コンポーネントに匹敵、あるいは上回るポテンシャルを持っています。ファームウェアによる機能のアップデートにも対応するのが特長です」。

 

豊富なラインアップ

OPPOでは「PM-1」「PM-2」「PM-3」とリスニングスタイルに合わせたヘッドフォンのラインアップも備える。

 

河野さんの鞄の中!

 

 

(1)出張などが多くプレゼンの機会も多いため、MacBookプロ・レティナディスプレイを持ち歩く。自宅では2010年モデルのMacBookプロをフルチューンカスタマイズしているとのことだ。「iPadもいいんですけど、MacBookプロのほうが安心感がありますね、英語キーボードがこだわりです」。

 

(2)iPhone 6とOPPO DigitalのポータブルDAC「HA-2」。ヘッドフォンはボーズのノイズキャンセリングヘッドフォン「クワイエットコンフォート」を愛用。「自社のヘッドフォンじゃないのかと言われてしまいそうですが、毎週飛行機に乗って移動しているのでこちらを使っています」。

 

(3)カメラはこだわりのライカMモノクロームにズミクロン35mmを装着して利用している。「高校時代からモノクロ画像フィルムを現像していて、モノクロは僕の写真の原点なんですよね。デジタルなのにカラーで撮れないので周りからは評判悪いのですが(笑)」。

 

【取材後記】
河野さんの服装はスティーブ・ジョブズを意識した出で立ちで、スニーカーはニューバランス。「創業してから4年間は夏でも冬でもこのスタイルで通しています。社内でも一番のアップル好きを自認しています」。

 

【取材後記】
HA-2に付属のACアダプタは急速充電の特許を取得しており、iPhoneと同じ容量のバッテリを30分程度で充電できる。モバイルバッテリ代わりにも使えるなど利便性が高い。