自信の発掘と大人のやめ方|MacFan

アラカルト Dialogue with the Gifted 言葉の処方箋

自信の発掘と大人のやめ方

前回に引き続き、今回は私の所属している東京大学先端科学技術研究センターの人間支援工学分野の研究室での活動について紹介します。

本研究室では、ユニークな個性を持ち不登校となった子どもたちへの新しい学びの挑戦として、異才発掘プロジェクト「ROCKET(Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents)」という活動を行っています。本プロジェクトは、次のような理念で定義づけられています。

「ユニークさゆえにそこに馴染めない子どもたちが学校にいなければならないことで不適応を起こす現状に疑問を感じています。彼らには彼らの新しい学びの場所と自由な学びのスタイルが必要です。ユニークな子どもたちが彼ららしさを発揮できるROCKETという空間を、彼らとともに創造することによって、結果としてユニークな人材が育つ社会的素地が生まれるであろうと考えています。 学びの多様性を切り拓く挑戦です」(公式ホームページより一部抜粋)

知識よりも知恵の獲得に重点を置いた本プロブラムでは、子どもを自立した人間として扱い、各業界のトップランナーとの対話を中心とした本質的な学びの時間を提供しています。座学中心の知識の獲得ではなく、ものづくりの本質理解や探求心の育成を目的とした体験型の学びを重視した実践型プログラムは、分野を問わず人の学びに関する新しい視点を獲得することができます(A https://rocket.tokyo/)。

私は障害や疾病を理由に人生のビジョンを見失い、自分の生まれた持った才能に気づけないでいる人や組織を支援・育成することを信念としており、産業医という仕事を通じて企業の中で組織に馴染めずに働くうえで自信を喪失している若者たちと対話する機会が多くあります。

中には、かつて私自身がそうであったように、生きていく過程で周囲の期待や常識という自らが心の中に作り上げた制約に縛られ、本来持っていた自信を奪われてしまい、才能(Gift)を見失ってしまっている若者もいます。一方で、ICTや情報通信環境の普及に伴って働き方が多様化したことで、たとえば地方で木こりをしながらオンラインで業務を行うフリーランスとして活動するなど、ユニークな人生を歩み始めた生き生きとした若者たちにも出会いました。彼らの生き方を分けた教育とは、一体何だったのでしょうか。

私はこれまで紹介した東京大学の研究室での活動をとおして、自身の常識に囚われた生き方に対する認識が変わり、体裁を気にした大人ぶった生き方を辞める勇気をもらいました。

「人生100年時代」を豊かに生きるためには、“自分らしく学び続けること”が必要であり、ときには“大人の鎧”を脱ぎ捨てて、好奇心と探究心を持った子どもたちから、学び方を教わるべきなのかもしれません。

 

大人の心に、好奇心と知の探求という栄養を。

 

 

Taku Miyake

医師・医学博士、眼科専門医、労働衛生コンサルタント、メンタルヘルス法務主任者。株式会社Studio Gift Hands 代表取締役。医師免許を持って活動するマルチフィールドコンサルタント。主な活動領域は、(1)iOS端末を用いた障害者への就労・就学支援、(2)企業の産業保健・ヘルスケア法務顧問、(3)遊べる病院「Vision Park」(2018年グッドデザイン賞受賞)のコンセプトディレクター、運営責任者などを中心に、医療・福祉・教育・ビジネス・エンタメ領域を越境的に活動している。また東京大学において、健診データ活用、行動変容、支援機器活用関連の研究室に所属する客員研究員としても活動中。主な著書として、管理職向けメンタル・モチベーションマネジメント本である『マネジメントはがんばらないほどうまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)や歌集・童話『向日葵と僕』(パブリック・ブレイン)などがある。