●介護食の問題点(低栄養)
高齢になると咀嚼や嚥下、消化能力の低下などから食欲不振になり、つい食事の量が減り、低栄養状態になっていることが少なくありません。
低栄養状態とは、その人に必要な量のタンパク質やエネルギーが足らない状態です。
低栄養状態になると、体力の低下のみならず、抵抗力も低下し、いろいろな病気にかかりやすくなります。介護者は、注意をしなければなりません。様々な食べ物から、バランス良く栄養素を取れるようなメニューを考えていくことが大切です。
また、逆に脂質などの摂り過ぎという問題点もありますが、以降を参考にして注意しましょう。
●味覚の低下
高齢になると味覚が低下し、塩味の濃い食事を好むようになります。そこで問題になるのが塩分の摂り過ぎです。塩分の摂り過ぎを防ぐには、だしでうまみを出す、すだちなどの柑橘系を使用して醤油の量を減らすなど工夫しましょう。
●栄養不足にならない食材選びと調理の工夫
エネルギーとなる3つの栄養素である、糖質・脂質・タンパク質は、総エネルギー量に対して、以下のような割合で取ることが望ましいと言われています。
糖質 :全摂取エネルギーの50~70%
タンパク質:男性60g 女性50g(1日の推奨量)
脂質 :全摂取エネルギーの20~25%
特に、タンパク源である肉は、消化機能の衰えから避けがちになりますから、調理の際は、切れ目を入れる、ひき肉を利用した料理にする、または、魚や大豆製品の利用などでタンパク質を補うことも必要です。
脂質は「摂りすぎないように」と言われますが、身体の細胞膜やホルモンの材料になり、不足すると血管や細胞膜が弱くなり、脳出血を引き起こすこともありますから、摂取しましょう。
脂質の割合は以下の通りです。
動物性:植物性:魚油=4:5:1
●ビタミンの補給と調理の注意点
ビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンとがありますが、しっかりビタミン補給するにはそれぞれ調理の際に注意が必要です。
水溶性ビタミンは特に水に溶けやすいため、洗いすぎたり、ゆですぎたりしないことがポイントです。
できるだけ丸ごと食べられるスープや味噌汁などにすることがベストです。
特にビタミンCは抗ストレスホルモンの合成に関与するため、毎日、補給しましょう。 またビタミンB群は心のビタミンといわれ、介護される人も、する人も心の安定に役立ちますから、補給できるように心がけてください。
脂溶性ビタミンは、油で炒めることで吸収が良くなります。
●脂溶性ビタミンの主な働きと含まれる食材
ビタミンA:皮膚や粘膜の健康を保つ。レバー、ウナギのかば焼き、ニンジン、西洋カボチャ
ビタミンE:血行を良くする。アーモンド、アボガド、ハマチ
ビタミンD:骨の形成。ウナギのかば焼き、紅鮭、干し椎茸
ビタミンK:血液凝固。ほうれん草、春菊、納豆
※ただし抗血液凝固薬(ワルファリンなど)を服用している方は、ビタミンKの摂取が制限されていますので、医師の指示に必ず従いましょう。
●主な水溶性ビタミン
ビタミンB1:糖質代謝に欠かせない。胚芽、枝豆、豚肉、ウナギのかば焼き
ビタミンB2:糖質・脂質・タンパク質の代謝に関与。レバー、牛乳、卵
ビタミンB6:タンパク質の代謝、セロトニンなど神経伝達物質の合成に関与。サンマ、レバー、ホンマグロ、バナナ
ビタミンB12:赤血球のヘモグロビンの合成に関与。
レバー、サンマ、真イワシ、牡蠣
葉酸:ビタミンB12とともに赤血球の合成、核酸の合成に関与。
春菊、アボガド、モロヘイヤ、レバー
ビタミンC:コラーゲンの合成、抗ストレスホルモンの合成に関与。
ブロッコリー、赤ピーマン、ジャガイモ、オレンジ、イチゴ
●間食で栄養バランス
食事の量が少なかったり、食欲がない場合には、栄養のバランスも悪くなりますから、間食も日常に取り入れるようにしたいものです。さつま芋やジャガイモをふかしたもの、リンゴをすりおろしたものなど、簡単にできるものでも良いのです。
●体にやさしいスイーツ・黒豆黒糖寒天
★ポイント:市販の蒸し黒豆を使って簡単にできる、やわらかく口当たりの良いスイーツを!!
<栄養素>
黒豆:ポリフェノール(抗酸化作用)、イソフラボン(ホルモンバランス)、レシチン(細胞の活性化)
黒糖:脳の活性化、整腸作用
寒天:食物繊維、鉄、ヨード、カルシウム(腸内の老廃物や毒素を吸収し、体外へ排出するので便秘解消に役立つ)
材料(2人分)
蒸し黒豆 60g
黒糖 30g
水 25cc
寒天パウダー 2g
<作り方>
① 使用する型の内側を水で濡らしておく
② 小鍋に水を入れ火にかけて黒糖をよく溶かす
③ ②に黒豆を入れて沸騰した中に寒天パウダーを入れよく混ぜる。再び沸騰してくる前に火を止めて粗熱を取り、型に入れ冷蔵庫で冷やす