【第08回】 | マイナビブックス

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今宵、虫食いの喪服で

【第08回】

2017.01.16 | 柏原弘幸

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俳優、柴田五郎は自分の病状を家族と所属会社幹部及び担当マネージャー以外に伏せ、入院を拒否し、いよいよ状況が差し迫って病院に運びこまれた翌朝、息を引き取ったという。余命半年の宣告を受けてからは取り乱すこともなく、神々しいまでに威厳に満ちた態度を貫き通したらしい。
柴田五郎の性格を知り尽くしている横山には意外に思えた。
世の中にあれほど往生際の悪い人間はいないだろう・・・・・・かねてから横山はそう思っていた。
聞き分けのない子供のように泣き叫び、死にたくない、どうにかしてくれ、どんな手を使ってもゴッドハンドの医者を探し出せ、それでもマネージャーか、ふざけんな、許さねえぞ、俺の病気を治せ! 俺が死ぬなんてそんなバカなことがあるか! 死んだらどうやって女を抱くんだ! 酒とメシはどうなる! 死にたくない! 死にたくない! 死ぬなんて絶対に嫌だ! ・・・・・・好き放題喚き散らし周囲を呆れさせる男。それこそが、〈わがままがスニーカーを履いて歩く男〉、柴田五郎の真骨頂ではなかったか・・・・・・

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