第四章・反撃
天国から地獄。
言葉を聞いたことがある人間は大勢いても、「知っている」人間はそうはいない。
気が付けば数歩先を走れていて、それを当たり前だと思う上の連中。スタートラインを横一列に切れて、それを何とも思わない大半の人間。そんなやつらの視界にも映らないほどの後ろから、必死に走っている人間はたくさんいるのだ。周りと横一列でちんたら歩く馬鹿どもや、先頭を当然だと走る最初からコースが違うだけの連中すら、抜き去れるかもしれないとようやく思えた時だった。
ある日突然、人生の底はここまで深かったのかと、自分自身の人生で思い知らされた。頭にこべりついていた困難さえ、問題ですらなかったのだと体ごと気づかされた。
これが、地獄か――。