[ebooks]記事一覧 | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

【検索結果】"松井久尚 "の一覧

文芸
小説  |
エッセイ  |
詩歌  |
戯曲・シナリオ
実用書
ビジネス  |
暮らし・子育て  |
語学・教養  |
コンピュータ  |
将棋・囲碁  |
地図・ガイド
スポーツ
ゴルフ
コミック
写真集・イラスト集
写真集  |
画集・イラスト集
その他
  • 【第16回】第四章・反撃(3)

    「こんなに動いてくれていたんだな。お前も戦ってくれていたなんて、ありがとう」
     もうプライドも何も捨てて、心に抱いた感情をそのまま言葉にした。兄弟に対してプライドなんて物を当てはめた時点でずれていた。

  • 小説

    【第15回】第四章・反撃(2)

    「……もう、諦めたわけ?」
     ぼそりと病室の入り口から声がした。
    「あ、陸兄!」理奈が嬉しそうに入り口を向いた。その驚きが茶番かは分からないが、真っ青だった理奈の顔にほんの少しだけ力が戻ったのは事実のようだ。

  • 【第14回】第四章・反撃(1)

     天国から地獄。
     言葉を聞いたことがある人間は大勢いても、「知っている」人間はそうはいない。
     気が付けば数歩先を走れていて、それを当たり前だと思う上の連中。スタートラインを横一列に切れて、それを何とも思わない大半の人間。

  • 【第13回】第三章・対決(3)

     目の前に突然薄暗い壁が現れた。と、次の瞬間、体の皮膚がめくり上げられるような激痛が走った。
    「うぐぅっ」思わず声が漏れた。漫画の世界だけではない。人間は体が一定以上のダメージを受けると、勝手に悲鳴をあげるようにできているようだ。

  • 小説

    【第12回】第三章・対決(2)

     真っ直ぐに走り続けてきた我が家が、どうして空っぽの悪に覆われなければならない。一歩間違えれば闇に吸い込まれるほど、社会の表と裏は隣合わせだというのかよ、馬鹿らしい。
     起き上がり方を忘れ去った俺の体から、感情の残骸が焦げた匂いを放ち始めた。

  • 【第11回】第三章・対決(1)

     俗世から切り取られた暗黒の闇が音もなく浮かぶ。薄暗い控室で四十を超える血生臭い眼が俺たち三人を串刺しにしていた。意外にもジムのように広く埃っぽい空間。ダークスーツの男たちがずらりと並び、奥には目つきだけは黒服たちと変わらず、資料を片手に金を数えている男も数人いる。

  • 【第10回】第二章・帝国(7)

    「感動し過ぎてこいつ我を失ってしまったみたいです」俺は咄嗟に水戸に向かって声を張った。下手に謝るよりも異常な興奮に乗っかる方が、まだダメージが少ないのではないか。
    「俺も本当に感動して、何と言うか、カリスマ性が尋常じゃなかったですよね。天見さん」

  • 【第9回】第二章・帝国(6)

     プログラムの最後に信者同士の懇談会が始まった。ホール中を全員が歩き回り、千人が掻き混ざりながらお互いに話し合う機会のようだ。『未来の翼』について熱く語り、悩みを共有し、絆を深めることで、自分たちの世界の正当性と自信に拍車をかけている。

  • 【第8回】第二章・帝国(5)

    「余計なことは挟まず聞け。もう今しかない」俺は最後に海斗を振り向いた。
    「聖書の中身の正しさなんて、結局は科学的にも論理的にも証明できるものではない。つばで失明を治す。海の上を歩く。死んだ人間が生き返る。そ

  • 【第7回】第二章・帝国(4)

    「まずは努力しましょう。あなたが思いつく限りの方法で、あなたを今苦しめている困難を乗り越えようとしてみましょう。戦ってみましょう。もうだめだと思うまで、その困難と対峙しましょう。それが初めの一歩です。

  • 小説

    【第6回】第二章・帝国(3)

     命がけの偵察に向けて情報は集めてきていた。
     この『未来の翼』では、教祖が現れる「総本山」に来られない全国五万人を超える信者たちにも、オンラインを通してこの映像が流れているらしい。ホームページによれば、各支部で集まり、この映像に合わせて曲を歌っているようだ。

  • 【第5回】第二章・帝国(2)

    「水戸さん。ん? 学生支部長とやらをやっているのですか?」
     俺は名刺の肩書きを自然な流れで聞いてみた。
    「ええ、そうなのです。私は光栄なことに、この地域の学生支部を任されております」
     水戸は演劇役者のように腹から声を出し、完璧とまで言える笑顔で俺たちにうなずき続けている。

  • 【第4回】第二章・帝国(1)

     万が一の時のためにと、俺は途中の家電用品店で買った物を靴下の中に隠しておいた。これを一体どんな場面で使うのか、そもそも使えるのか、別の世界から来た俺には全く見当もつかない。必要ならばその時に考える。別の世界のことはこれぐらいでないときりがないと、胸に渦潮のように集まる闇を深呼吸で必死に吐き出す。

  • 【第3回】第一章・挑戦(3)

     笑われてもいいが、俺がこの未来のない社会でなんとか踏ん張れていたのは、家族を、この一族を俺が守るという決意だった。
     職場には定時で帰ることをミッションに会社に来る老兵が六人いる。百人を超える事業部の中でも「墓場」に位置するチーム。俺以外は全員五十歳以上で、髪の毛と有給が残っているのは俺だけだ。

  • 【第2回】第一章・挑戦(2)

    「だけど、問題はここからなの」理奈が擦れた言葉を続けた。俺はソファの下で身を寄せ合う三人に近づき、ゆっくりと腰を下ろして目線を同じ高さにした。
     立っていると、足の震えが兄弟たちにばれてしまいそうだった。
    「このお店、私たちの家すらも、盗られてしまいそうなの」

1/2