第二章・帝国
万が一の時のためにと、俺は途中の家電用品店で買った物を靴下の中に隠しておいた。これを一体どんな場面で使うのか、そもそも使えるのか、別の世界から来た俺には全く見当もつかない。必要ならばその時に考える。別の世界のことはこれぐらいでないときりがないと、胸に渦潮のように集まる闇を深呼吸で必死に吐き出す。
あれから一週間後の日曜、俺は自慢のプリウスで再び群馬まで来ていた。今回は実家にではない。実家から二十分ほど離れた場所にある、『未来の翼』の支部へ偵察に行くためだ。
「姉ちゃんからメールがあって、お袋を無事病院まで連れて行ったって」
助手席の海斗がスマートフォンから顔を上げて俺に報告した。