「水戸さん。ん? 学生支部長とやらをやっているのですか?」
俺は名刺の肩書きを自然な流れで聞いてみた。
「ええ、そうなのです。私は光栄なことに、この地域の学生支部を任されております」
水戸は演劇役者のように腹から声を出し、完璧とまで言える笑顔で俺たちにうなずき続けている。もはや、「笑み」というレベルではない。ピエロの首振り人形が乗り移ったように、人間の体が目の前で揺れ続けている。両脇の二人の中年は、学生支部長の「喜び」を共有するように笑いながら、俺たち二人を奥が見えない真っ黒い目で観察している。