混乱
『夕方には帰るから』
そう締め括られたメールの文字は、その時間になったら部屋に来て欲しいという意味だと俊は理解した。茉莉の部屋に連日泊まって、散々愛し合った末の、日曜の朝だった。俊は、秋からのメールのことを茉莉には何も伝えず、二人で一緒に午後からはサークルの卒業公演の打ち合わせに顔を出す。脇で後輩たちと一緒に舞台での立ち回りを稽古する彼女を時折眺め、俊は心癒された。他の誰も知らないと思うと、高揚感もある。
照明等の段取りの説明を一通り受けると、俊は先に練習室を後にした。茉莉は夜まで稽古を続けなければならないので、一緒には帰れない。これから秋の所へ行かねばならないので、ちょうど良い都合だった。
自分のアパートの部屋へと帰り、日が暮れるまでじっくりと考える。秋に、いつ、どうやって、どのように説明するか。彼女の様子や状態を含め、検討は切りがなかった。茉莉を不安にさせない。これからの経過は、茉莉に一切波及するようなことがあってはならない。自分一人で片付けなければならない。