合鍵でドアを開けると、目の前には真っ暗な空間が広がっていた。秋のアルバイトのシフトは把握していたので、また彼女は友達と何処かへ遊びに行ったのだと分かる。
誰もいない部屋、明かりを点けると、家具や雑貨、彼女の脱ぎ散らかした服が浮かび上がる。まるで彼女の抜け殻の中にいるような、空虚な気分だった。
俊は、一先ずベッドに腰を下ろした。何の為に、という疑問が心の中で小さく泡を立てた。ただ鬱屈とした気分だけが溜まり、俊はテレビの電源を入れた。
興味もないバラエティー番組が映り、チャンネルを手早く変える。局を一周して、諦め、放置した。暇つぶしで自分の鞄を漁った。教科書に紛れて、見慣れぬクリアファイルを見つけた。引っ張り上げるとすぐに思い出す。
三回生就職ガイダンス。先月、大学で行われた説明会の資料だった。取り出して中を開くと、就業率のグラフが目に入り、すぐに閉じた。就職活動も、遠いと思っていたのに、いつの間にかもうすぐ目に見えるところまで近づいている。辛いということ以外は一切印象のない、見込みの薄い就職合戦に投げ出されてしまう。