【第9回】 | マイナビブックス

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わが逃走

【第9回】

2017.03.24 | 佐川恭一

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 そんな不毛な生活の中、西村の受験が決着を見せた。出来すぎたことに、京都産業大学経営学部も、龍谷大学経営学部も合格だった。国語がいつも通り炸裂したのに違いなかった。青年は、このドアホがいっぱしの大学生になると知り、感動のあまり涙を流しそうだった。

「凄い……よくやった……」

「泣くのはよしたまえ。予定通りだよ」

「よくやったわ俺……」

「え?」

「お前みたいなカスを、俺はちゃんとした大学に入れたんや!」

「……」

「おいこのカス! お前は一生俺様に感謝しろ!」

「はい」

「あえて言おう、カスであると! ハッハハハハ!」

「先生」

「なんや」

「二年間ありがとうございました」

 西村は泣いていた。今まで二年にもわたり、ふざけたところしか見せなかった西村が、会話の五割をファーストガンダムのセリフで構成していた西村が、自分の言葉で話そうとしている。青年は慌てて向き直った。

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