【第8回】 | マイナビブックス

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わが逃走

【第8回】

2016.06.23 | 佐川恭一

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 一方、もう一人の生徒、アホの西村も同じく受験直前であった。彼はやはり相変わらず底抜けのアホであり、母親は「同志社か立命館に入れてほしいんです」と抜かしていたが、青年は本当にふざけないでくださいと思っていた。同志社、立命館は関西の難関私大であり、基本的には優等生が入学するところである。レベルの低い高校の中でさえ平均よりはるか下に位置する西村が、合格できるはずもなかった。

「どうしよう……」

「何がですか?」

「お前どこ受けさせたらいいんやろ」

「お母さんは同志社か立ぶっ」

 青年は西村の言葉を遮り、アゴを強く掴んで言った。

「受かるわけないやろ! betterの強調にveryを使ってしまうお前が!」

「やれやれ。英語を避ける方法はないものか……」

「ねぇよ!」

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