一方、もう一人の生徒、アホの西村も同じく受験直前であった。彼はやはり相変わらず底抜けのアホであり、母親は「同志社か立命館に入れてほしいんです」と抜かしていたが、青年は本当にふざけないでくださいと思っていた。同志社、立命館は関西の難関私大であり、基本的には優等生が入学するところである。レベルの低い高校の中でさえ平均よりはるか下に位置する西村が、合格できるはずもなかった。
「どうしよう……」
「何がですか?」
「お前どこ受けさせたらいいんやろ」
「お母さんは同志社か立ぶっ」
青年は西村の言葉を遮り、アゴを強く掴んで言った。
「受かるわけないやろ! betterの強調にveryを使ってしまうお前が!」
「やれやれ。英語を避ける方法はないものか……」
「ねぇよ!」