三回生になり、いよいよ社会学専修の勉強が始まった。大講義室で先生の話を聞くだけという受動的なスタイルの授業が減り、小さな演習室で議論し合うという、青年がかなり苦手とするタイプの授業が増えた。青年は周囲の熱気にも、とてつもないスピードで展開していく議論にもついていけず、部屋の隅で小さくなって時間が過ぎるのをひたすら待つ日々が続き、ほとほと嫌気がさしていた。そして同じ社会学を専攻した三倉も、積極的に発言はするが、その内容から察するに全く授業を理解できていなかった。同じ専修のとある女などは、「私この学者が大好きで、日本語訳されるのが待ちきれなくて原書取り寄せちゃいました」と言って、流暢な英語を駆使しながら教授とやり合った。青年は「おいおい、冗談やろ?」と思ったが、周りの学生は「俺も注目してたんだよね」「ちょっと軽く内容解説してよ」などと盛り上がる。専修の飲み会なども断り、青年は課せられたレポートをひたすらに書いた。書き続けた。