【第7回】 | マイナビブックス

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わが逃走

【第7回】

2016.06.21 | 佐川恭一

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 彼らは前期の試験を終え、夏休みにはこれまでと変わらない自堕落な生活を続けた。田中の家で地球を守り、ラヴァーズ・メモリアルの実況プレイを鑑賞し、流行りのアニメをチェックし、25メートル・プール一杯分ばかりの発泡酒を飲み干した。ただ一点、青年にとって違ったのは、清楚系・田原と頻繁に連絡を取るようになったことである。そして九月も下旬にさしかかろうかという頃、一通のメールが届けられた。

「一回、二人で遊びに行かない? 映画でも見に行こうよ」

 彼は狼狽しながら、だらしなく伸びた髪を切り、パーマを当て直し、秋用の服を買い、約束の日を迎えた。また二万円が飛んでいった。待ち合わせの場所は三条京阪であった。

「ごめん、待った?」

 少し遅れてやってきて、お決まりのセリフを発する彼女。二時間前から到着していた青年は、「お、俺もさっき来たとこやで」と言った。

「じゃあ、映画館行こうか」

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