彼らは前期の試験を終え、夏休みにはこれまでと変わらない自堕落な生活を続けた。田中の家で地球を守り、ラヴァーズ・メモリアルの実況プレイを鑑賞し、流行りのアニメをチェックし、25メートル・プール一杯分ばかりの発泡酒を飲み干した。ただ一点、青年にとって違ったのは、清楚系・田原と頻繁に連絡を取るようになったことである。そして九月も下旬にさしかかろうかという頃、一通のメールが届けられた。
「一回、二人で遊びに行かない? 映画でも見に行こうよ」
彼は狼狽しながら、だらしなく伸びた髪を切り、パーマを当て直し、秋用の服を買い、約束の日を迎えた。また二万円が飛んでいった。待ち合わせの場所は三条京阪であった。
「ごめん、待った?」
少し遅れてやってきて、お決まりのセリフを発する彼女。二時間前から到着していた青年は、「お、俺もさっき来たとこやで」と言った。
「じゃあ、映画館行こうか」