【第6回】
2016.06.13 | 佐川恭一
青年は六月の下旬、緊張した面持ちで京阪の四条駅に立ち尽くしていた。二〇〇五年当時はまだ「祇園四条駅」に改名される前であった。青年はこの日のために新しく服を買い、美容院にも行き、軽くパーマも当てていた。すでに二万円以上投資しており、この後男が飲み代を全額負担することを考えると、なけなしの貯金を思い切り下ろさざるを得なかった。
ほどなく、三倉が自転車に乗ってやってきた。驚いたことに、髪型はオールバックでサングラスをかけていた。ミクシィで騙された時と同じサングラスだった。
「おいすー。永井来るの早いじゃん」
「お前……なんか気合い入れる方向間違ってないか?」
「いやこんなもんだろ。N證券の社員だって、オールバックのエリートサイヤ人と呼ばれてるだろ」
「それはまあ、N證券の社員はな……」