【第5回】 | マイナビブックス

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わが逃走

【第5回】

2016.05.31 | 佐川恭一

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 計画当日の正午、青年と田中は京都駅の中央玄関側二階にあるミスタードーナツで、ポンデリングを食べながらコーヒーを飲んでいた。

「これはちょっと早く来すぎたんじゃないですか」

「いや、三倉は気の小さい男や。かなり早目に来る可能性がある」

「二時間も早く来るやつがいますかね」

「もし俺があいつの立場なら、来るな」

「僕なら来ませんが……気が小さいのは永井君の方なのでは」

「俺は気が小さいが、三倉も同程度やと踏んでる。あいつのは表面化せんだけや」

「そうですかねぇ」

 そうこう話していると、三倉に背格好の似た男が中央改札付近にやってきた。

「あれちゃうか?」

「似てますね! いかにも手持ち無沙汰ですぅ」

 その男はしばらく改札の前に立ち尽くした後、野球のピッチャーのような動きをし始めた。何故か念入りに投球フォームを確認している。腕を大きく振りまわす彼を、周囲の人がいぶかしげに見ているのがわかる。

「……あそこまでアホやろか」

「ありえます。あの動き、YO! って感じがします」

「言われてみればそうやな」

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