【第10回】第十話 価格決定理論 | マイナビブックス

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ちょっと前になりますが、日本能率協会の調達・購買大会でトヨタ自動車の元購買部長のご講演をお聞きする機会がありました。
 
その中でトヨタ自動車の購買価格決定のやり方は
 
目標購買
適正原価+利益
差額値決め
相見積
 
この4種類であるとおっしゃっていました。
 
ご講演の中でバイヤーは相見積に走りすぎて、だんだん現場から離れてしまい、の適正原価を見極める、いわゆるコスト査定能力を失いかけている。やはり重要なのは、コスト分析や査定能力であろう、とおっしゃっていたことが印象的でした。
 
先日購買ネットワーク会でもコスト決定のやり方として、「完璧なコストテーブルを整備する」ことで「根拠のないコストダウンはない」。そうすれば「競合は必要ない」という話題がでてきました。
 
これらの話を総合すると、価格決定理論は大きく2つの手法に分かれることが言えます。

コストテーブル、コスト分析、コスト査定等による理論値に基づく価格決定
相見積、競合見積に基づく価格決定
 
どちらが正しいか、一概に言えないでしょう。
 
そもそも完璧なコストテーブル、コスト分析ができるかと言う点では疑問をはさむ余地があります。また、コストテーブルをどんなに精緻に作ったところで、それを適正原価として売る側が納得してくれなければ意味がない、という点も重要なポイントです。
一方で、相見積、競合見積に関してもそうです。全ての購買で少なくとも2社以上の売り手を探し出せるか、という点で、特に技術的優位性にすぐれる戦略カテゴリーの品目などは、競争させることさえ難しいものも少なくありません。
 
私が日頃から考えているのは、この2種類の方法論を会社や品目、売り手ごとに組み合わせながら、価格決定の方法をオプションで数多く持つ必要性です。
 
特に日本企業の場合、IE的なアプローチが先行したため、各企業に使えないコストテーブルだけが残っており、20年前のコストテーブルをメンテナンスもせずに、先達のこういう資産に「古すぎて使えないよー」と文句を言いながら、未だに拠り所にしている、というのが実態ではないでしょうか。相見積、競合については、日本企業の場合一般的にはあまり行われていない、というのが実情だと思います。
一部の業種や品目に関しては、必ず入札を義務つけている公共のような世界もありますが、実態としては、図面が出図された時点で既に購入先が特定され、あとは赤鉛筆で査定、というのが多くのケースだと考えられます。
 
この2つの手法を組み合わせながら最適な価格決定方法を追求するとともに、例えばオークションなどのツールを使用して価格決定に市場原理を持ち込むことは、非常に論理的なことです。
 
よく「もっとも安い値段で買うことが最も優秀なバイヤーである」という議論を聞くことがありますが、私は違うと考えています。
「もっとも安いコストでつくれるようにすること、また買う側のいろいろな制約の範囲内で最適な価格決定ができること」これが本来目指すべきところではないでしょうか。
(2005年10月29日)

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