第二の転機
大騒ぎで出ていった旅は、終わってみればあっけない。残暑の西陽が斜めにさし込む自室の赤茶けた畳の上で寝ころがっていると、けだるい虚脱感がおそう。今までは目の前の仕事をこなすのに夢中で走って来たのだが。将来のことも本気で考えなければ。貯金も遣ってしまったし……。
現実的なビジョンもないまま、また以前と同じような忙しい日々が始まった。帰ってきて間なしに「千本(ちもと)薫子(けいこ)とムード・ロマンティカ」という女性だけの新しいバンドが結成され、私も参加することになったからだ。弦楽器を中心に、十五人編成のセミクラシック・オーケストラで、私はヴィブラフォーンとパーカッションを担当する。