終止符を打つのは誰
書斎を出た彼はトイレに入る。用をたし、水を流して出て来た。書斎に戻る。二、三分してまたトイレのドアの開く音。水を流したかどうかの確認作業のくりかえしが、延々とつづく。蛇口に手を当てて確認している。奇妙な行為だ。見ているこちらが気が変になりそうだ。見て見ぬ振りができるまでには、かなりの忍耐と時間が必要だった。ここで「やめなさい」とどなったらおしまいだ。昼間は、見て見ぬふりもだんだんとできるようになる。止まるまでやらせておいても害はない。これが夜になると話は別だ。
隣のベッドにいる者には、起き上がる音、ドアの音、水の音、はてはふとんの音までが耳障りになってくる。もう眠るどころではない。ガバッと飛び起きる。