【第11回】第五章 アルツハイマーの彼と共に歩んだ日々 ―(1) | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

アルツハイマーの夫を与えられた妻の心の記録

【第11回】第五章 アルツハイマーの彼と共に歩んだ日々 ―(1)

2016.12.21 | 岩井智子

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

終止符を打つのは誰

 

 書斎を出た彼はトイレに入る。用をたし、水を流して出て来た。書斎に戻る。二、三分してまたトイレのドアの開く音。水を流したかどうかの確認作業のくりかえしが、延々とつづく。蛇口に手を当てて確認している。奇妙な行為だ。見ているこちらが気が変になりそうだ。見て見ぬ振りができるまでには、かなりの忍耐と時間が必要だった。ここで「やめなさい」とどなったらおしまいだ。昼間は、見て見ぬふりもだんだんとできるようになる。止まるまでやらせておいても害はない。これが夜になると話は別だ。

 隣のベッドにいる者には、起き上がる音、ドアの音、水の音、はてはふとんの音までが耳障りになってくる。もう眠るどころではない。ガバッと飛び起きる。

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。

  • 会員登録
  • ログイン