「忘れ物をする」ということ
病気になる前の彼にとって「忘れ物をする」ということは彼の辞書にはないほどの人だった。彼にとって「忘れ物」という行為それ自体、人間としてあるまじきことなのであった。病気になっても、それは「確認」という動作で最後まで残っていた。
席を立つ、すぐ振りかえる。レストランでも、電車でも、その場を離れる時にはもう心配である。こんな行為が残るとは思わなかった。
「もう大丈夫、持ちましたから」といってその場から遠ざけるのが良い。
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病気になる前の彼にとって「忘れ物をする」ということは彼の辞書にはないほどの人だった。彼にとって「忘れ物」という行為それ自体、人間としてあるまじきことなのであった。病気になっても、それは「確認」という動作で最後まで残っていた。
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