題名は決まった。「アルツハイマー」
長丁場の舞台になりそうだ。いつ終るともしれない公演だ。終わりの見えない舞台、戯曲の予測がまったくつかない。誰一人、同じ場面を経験していない舞台だ。
演出家と役者とを両立させるにはどうしたらよいのだろう。何をどう演じたらいいのだろう。
私という手のひらに一人の人生が乗せられた。神のようなことをしてもいいのだろうか。このまま、芝居をはじめてもいいのだろうか。人生四十数年を共に歩んできたはずである。ある日突然その一人の人生を、私は私の内にとりこもうとしている。演出家として、一人芝居を演じる孤独な役者として、舞台を務めなければならない。