出版をいつにしよう
「先生の退職と七十歳を記念して本を出版しよう」という声が、数年前から読書会の先輩たちから上がっていた。三年後の一九九八年七十歳をめざして、着々とその計画が練られ出していた。しかし、三年後まで待てるのだろうか。本を出すということは並大抵の仕事ではない。自分で今まで書いた物を整理し、校正しなければならない。いつごろまで彼はそれに携わっていけるのだろうか。本当に三年後と言っていいのだろうか。
主治医の答えは「即始めなさい」であった。頭のしっかりしているうちに一日も早く校正に入るようにとのことであった。