【第8回】第三章　私はこれから何をなすべきか　―（1）

本人への告知

　ＭＲＩの写真を見せていただく。素人が見てわかるはずのない写真だが、一応説明を受ける。私にとってはどうでもよい写真だった。アルツハイマーと診断されたからには、もう写真を見てもどうこうなるものではない。分かるのは脳の萎縮がはじまっているのだということだけである。

「アルツハイマーを直す薬が発明されたらノーベル賞だよ」と孫が言う。本当に誰しもが思うことだ。アルツハイマーならずとも痴呆からの解放は、年を重ねる者の願いなのだということは確かである。