【第7回】第二章 変化といくつかの引き金 ―(5) | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

アルツハイマーの夫を与えられた妻の心の記録

【第7回】第二章 変化といくつかの引き金 ―(5)

2016.09.30 | 岩井智子

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旅先から友人を残して帰宅

 

 ドイツ文学の竹内康男先生とは専門を異にしながら、大学で唯一心許せる友人であった。いつの頃からか、一年に一度、二人で箱根にでかけては、二晩語り明かすのが恒例になっていた。旅行嫌いの彼も、竹内先生とだけは楽しそうに出かけていく。

 毎年行く先は箱根、同じ宿、行く時間、乗る電車も同じ。これこそ彼らしい旅であるが、その年の旅は少し違った。

 竹内先生の定年退職祝いにと、彼がお招きしたのだ。

 ところが、出かける前日から「歯が痛いから行くのをやめる」と言い出した。

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。

  • 会員登録
  • ログイン