【第6回】山で会い、山に還る ― 訓練所通い(1) | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

愛犬との出会いと、別れ 上巻

【第6回】山で会い、山に還る ― 訓練所通い(1)

2015.10.16 | 久根淑江

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

訓練所通い

 

 新しい年になるとハチは少しずつじゃれ付くようになり、体力がつくにつれ、それが日に日に激しくなった。

 尖った乳歯で噛まれるとチクッと痛いのは子供の頃から経験済みだったが、ハチの乳歯には特別の鋭さがあった。ハチはふざけているのだが、私の手の親指と人差し指の間を噛んで振り回すと、冗談とも思えず表皮が切れて血が噴き出すこともある。

 噛ませまいと手を隠すと、今度は足もとに来てズボンを前足で引っ掻き始める。鋭い爪を立て、体重をかけてぶら下がるように引っぱるので、古ズボンはひとたまりもない。ウールを突き刺し、タイツの下のすねの皮膚にまで何本かのみみず腫れが残る。ズボンは、ひらひらとハタキの布切れのように垂れ下がる。

続きをご覧いただくには、会員登録の上、ログインが必要です。
すでにマイナビブックスにて会員登録がお済みの方は下記の「ログイン」ボタンからログインページへお進みください。

  • 会員登録
  • ログイン