疲れが残る体で出社すると石田が声をかけてきた。
「大橋さん。おはようございます。だいぶお疲れですね」
呑気な声と表情に独身は気楽なもんだと思ったが少し和んだ気持ちになった。
「どこかの後輩がなかなか俺の仕事をもらってくれないからな。まだまだ楽はできそうにないんだよ」
「だいぶ使えるようになってきたでしょ。厳しい先輩にしごかれてるんだから」
明るい笑顔のまま石田は返した。鞄の中の物を出して悟は一度デスクに向かったが、意を決して部長の席に歩を進めた。
「部長、今日、半休をもらいたいんですが構いませんか?」
潔(いさぎよ)い声がフロアーに響いた。
少し驚いた顔で山田は悟を見た。悟は、めったに年休を使わないからだ。おかげで流れてしまった年休は一つや二つではない。