【第3回】 | マイナビブックス

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父親のカタチ

【第3回】

2015.08.07 | 稲森識視

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 いつもは通り過ぎる夢(ゆめ)橋(はし)駅。改札を出ると駅前は小さな店が軒を連ね思っていたより賑やかだった。駅前通りはなだらかな坂道で、色あせた看板が上り切った先に夢橋神社があることを示している。

 ハンカチを片手に坂を上り始めるとそれはすぐにわかった。

 狭い土地に苦労して建てられたことが一目でわかる三角の雑居ビル。通りに少し突き出た集合看板でその店は三階だとわかった。

 一階の眼科と二階の眼鏡屋を横に見て階段を三階まで上がった。少し不気味さの漂う入口がある。ドアをそっと押して店内に入ると、数メートル先のレジの近くに白髭の老人が本を持って座っていた。

 店主らしき老人は「いらっしゃい」と言って丸い縁の眼鏡から目だけを上げてこちらを見た。一瞬目が合うとすぐに本に関心を戻した。

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