第2章 ゲーム専用機とソーシャルゲームのユーザー重複
ゲーム専用機ユーザーの登録者が多いSNSはmixi、Facebook、Mobage。しかし、ゲーム利用が多いのはMobage、GREEの“ゲーム系”SNS
言うまでもなく、ゲーム市場はこれまで家庭用ゲーム機(ゲーム専用機)を中心に回ってきた。そこへ、ここ数年成長著しいソーシャルゲーム市場が加わり、マーケット全体はこれまでにも増して多様化しつつある。 今回の市場の変化が今までの変化と異なるのは、それが必ずしも技術の進化と連動していないという点である。今までのゲーム市場の変化は、8bitから16bitへ、2D表現(背景+スプライト)から3D表現(ポリゴン)へ、ナローバンドからブロードバンドへ、など何らかの技術革新を伴ってきた。しかし、現在起きているパラダイムシフトは、これらとは全く異質のものである。最近のソーシャルゲーム市場の急激な成長は、技術ではなくユーザー自身のプレイスタイルそのものを変化させてきた。これは、言うなれば“マインド・イノベーション”とでも呼ぶべきものであろうか。
そこで、この章では既存市場(ゲーム専用機)と新規市場(ソーシャルゲーム)のユーザーがどれくらい重複しており、どのような特性を備えているのかというテーマにアプローチしてみたい。
【図1】は、ゲーム専用機ユーザー(家庭用ゲーム機を1台以上所有しており、いつでもプレイできる状態にあるユーザー)が、主要SNSをどれくらいアカウント登録しており、またそこでゲームコンテンツをプレイしているかをまとめたグラフである。グラフの各構成要素は以下の通り。
棒グラフ:長(薄い青) ・・・ SNSの登録ユーザー全体
棒グラフ:中(薄い赤) ・・・ (上記のうち)ゲーム専用機を持っているSNS登録ユーザー数
棒グラフ:短(濃い赤) ・・・ (上記のうち)8月にそのSNS上で何らかのゲームコンテンツをプレイしたユーザー数
折れ線グラフ:黄色 ・・・ SNS登録者数全体に占める、ゲーム専用機ユーザーの比率
折れ線グラフ:緑 ・・・ 8月にそのSNS上で何らかのゲームコンテンツをプレイしたユーザーの比率
ゲーム専用機ユーザーにおけるSNS登録ユーザーの規模が一番多いのは、mixiの801万人。以下、Facebook(673万人)、Mobage(522万人)と続く。この序列自体は、SNS登録ユーザー数全体(一番長い棒グラフ)でも基本的には同じである。それぞれのSNSで若干のばらつきはあるものの、ゲーム専用機所有率(黄色の折れ線グラフ)は概ね70~80%といったところ。この序列が大きく崩れるのが、「ゲームMAU(一番短い棒グラフ)」と「ゲーム利用率(緑の折れ線グラフ)」である。8月度のMAUが一番多かったのはMobageの289万人。mixi(167万人)とGREE(208万人)がほぼ同じ規模でそれに続く。ゲーム利用率はMobage、GREEの2大ゲーム系SNSがいずれも50%前後と高い数値を示し、その他のSNSを引き離している。 このように、ゲーム専用機ユーザーであっても、それぞれのSNSに登録する際、それが“ゲーム系SNS”と“コミュニティ系SNS”とでは、その目的に明確な違いがあることが分かった。
若いPS3ユーザーほど専用機とソーシャルゲームを使い分けている?
右サイドの「PS3のみユーザー」は、40歳くらいまではIPS構成にそれほど明確な違いは見られない。あえて言えば若年ユーザーの方がほんの少しだけイノベーティブな傾向が強いようにも見える。それに対し、左サイドの「重複ユーザー」は、全体的にイノベーティブ傾向が非常に強い傾向が見られる。中でも若年層のイノベータ比率は4割を超える。つまり、ゲーム専用機ユーザーであっても、それと同時にソーシャルゲームを志向するユーザーは、全体的に生活の中にゲームが深く結びついており、また若年ユーザーほどその度合いが強い。具体的に言えば、そのニーズ(ゲームに求めるベネフィット)やプレイシーンに応じてゲーム専用機とソーシャルゲームを使い分けている可能性が高いと考えられる。
このように、市場トレンドの変化を多角的に考察することが非常に重要であり、その結果ターゲットユーザーに対し画一的ではなくきめ細かいアプローチをするための示唆が得られることも少なくない。